2018年6月19日開設
2018年10月3日更新


2018年6月18日大阪府北部の地震(MJMA6.1)の強震動

2018年6月18日7時58分頃、大阪府高槻市付近を震源とするMJMA6.1の地震が発生しました。 この地震で観測された強震波形記録について概要を整理しました。

観測された地震動の空間分布

データを解析した地点の中で、最大加速度が最も大きかったのは枚方市大垣内震度計の900cm/s2でした。 また、K-NET OSK002(高槻)では806cm/s2、京都市河原町御池震度計で861cm/s2でした。 また、震央に最も近い高槻市役所にある気象庁の震度計では490cm/s2でした。 大阪府北部から京都府南部にかけて、比較的揺れの大きかった地点が分布しています。

最大速度が最も大きかったの地点は、枚方市震度計で44cm/s、茨木市震度計で41cm/s、K-NET OSK002(高槻)で41cm/s、八幡市震度計で40 cm/sでした。 このほか、高槻市から茨木市、豊中市にかけて比較的大きめの観測値となっています。 揺れの強い観測点は震源から南西方向の大阪平野北部や京都盆地南部に分布しています。

地表で観測された最大地動速度(左)及び最大地動加速度(右)の空間分布

最大地動速度及び最大地動加速度の分布

観測された地震動の距離減衰と地震動予測式との比較

最大水平速度を司・翠川(1999)の地震動予測式(内陸地殻内地震、Mw5.6、深さ13km)から得られる予測値と比較しました。 観測値にはサイト特性の補正をしていませんので、比較的硬い地盤(青)と軟らかい地盤(緑)の予測値と比較しています。震源の位置は気象庁によって決定された震源位置とし、点震源として震源距離を計算しています。 震源距離約40km以内で、既存の地震動予測式よりも大きめの地震動を観測した地点が多く見られます。 この原因が震源特性によるものか、大阪盆地の深い構造を含む地盤特性によるものか、もしくはその両方かは、現時点でははっきりとは分かりませんが、今後、丁寧に調べていく必要があります。

(2018/6/24追記、10/3レイアウト変更により一部修正) 上下の図は同じデータをプロットしたものですが、右側の図では、厚い堆積層が存在する大阪盆地(大阪平野)、京都盆地、亀岡盆地、奈良盆地の堆積層上に位置する観測点を赤色で着色しています。今回の地震が、大阪盆地の北東端付近で発生しているため、震央に近い多くの観測点はこれらの堆積盆地内に位置していますので、堆積盆地に厚く堆積している地震波速度の遅い堆積層による地震動増幅の影響はあると思います。 ただし、丹波帯の岩盤に位置する京都大学防災研究所阿武山地震観測所の観測坑道での記録(ABU、水色の丸)も約16cm/sと、既往の地震動予測式から予測される値の2倍程度の大きさとなっていますので、地盤による増幅効果だけではなく、震源特性の寄与も考える必要がありそうです。

地表で観測された最大水平速度及び加速度の距離減衰

最大水平速度及び加速度の距離減衰
最大水平速度の距離減衰

代表的な地点での擬似速度応答スペクトル

震央に近いJMA高槻、K-NET高槻、CEORKA茨木白川の3地点について擬似速度応答スペクトル(減衰5%)を計算し、比較しました。 参考のため、1995年兵庫県南部地震の際の神戸海洋気象台及びJR鷹取駅の波形から計算した擬似速度応答スペクトルもプロットしています。 2018年6月18日の大阪府北部の地震では、高槻市内の2観測点では周期約0.3~0.4秒の比較的短い周期の地震動が卓越しており、茨木白川では周期約0.8秒の地震動が卓越していました。 M7.3であった1995年兵庫県南部地震の震源近傍の地震動に比べると、今回のM6.3の地震では、相対的に短めの周期の卓越する地震動という特徴が見られますが、それでも地震規模が小さいため、1995年兵庫県南部地震の代表的な強震記録を上回る大きさであったわけではありません。

震央に近い観測点での擬似速度応答スペクトル(減衰5%)

震央に近い観測点での擬似速度応答スペクトル(減衰5%)

参考: 2013年淡路島の地震の強震動について

2013年4月13日淡路島の地震(MJMA6.3)のときの地震動については、 こちらのページ をご覧ください。


謝辞

国立研究開発法人防災科学技術研究所 強震観測網・広帯域地震観測網気象庁関西地震観測研究協議会港湾地域強震観測国立研究開発法人建築研究所、 大阪府、京都府、京都市、兵庫県、JR西日本 および京都大学防災研究所の強震記録を使用しました.関係者の皆様に感謝いたします.


更新履歴


(京都大学防災研究所 地震災害研究部門 強震動研究分野 浅野 公之)