1997年修士論文

大阪盆地地域における地震波伝播特性とサイト増幅特性 および兵庫県南部地震の余震の震源バラメターに関する研究

Cesar Aaron Moya


大阪盆地およびその周辺地域に配置された11地点で得られた1998年兵庫県南部地震の余震記録を用いて,震源バラメター,減衰を表す Q,および各観測点でのサイト増幅特性の推定を行った.

第1部では,この地域の伝播媒質の平均的 Q と基準点に対する相対的サイト増幅が地震動スペクトルの線形インバージョンから推定された.Q は0.33Hzから10Hzの範囲に周波数に比例して大きくなることがわかった.相対的サイト増幅は地盤条件と顕著な相関が見られる.盆地端部近くに位置するサイトでは地震波の入射方位に依存して増幅特性が異なる.観測記録から伝播媒質の平均的 Q を取り除いた後,各観測点毎に5Hz-20Hzの高周波範囲につき見かけの減衰をあらわすκ が求められた.

ここでのκはサイトバラメターとみなされる.各サイトのκは分散を示すが,その平均値は地盤条件に依存している.特に軟弱な地盤でのκは地震動の大きさ,すなわち最大速度や最大加速度,によって系統的な変化を示した.

第2部では,観測記録から震源特性およびサイト特性が遺伝的アルゴリズム(GA)を用いたインバージョンにより分離された.伝播媒質の Q は第1部の線形インバージョンの結果を用いる.個々の地震の震源スペクトルは ω2 model を仮定して地震モーメント M0 とコーナー周波数 fc をモデルバラメターとし,各観測点のサイト増幅は,地震によらず一定と仮定して,周波数の関数で表されるモデルバラメターとして表現する.観測と計算値の差が最小になるようにしてモデルバラメターが推定される.得られた各観測点のサイト特性を基準点に対する比として表すと第1部の線形インバージョンの結果とよく一致する.M0 と fc から各地震のストレスドロップが Brune Moldel(1970)を用いて推定される.余震のストレスドロップは本震の記録を用いた震源インバージョンの結果とよい相関が見られる.