2004年09月05日23時57分の紀伊半島南東沖の地震による強震動

2004年9月9日22時20分作成
2004年9月10日22時00分改訂
2004年9月13日17時00分改訂
2004年9月14日17時00分修正



強震観測点における擬似速度応答スペクトル(減衰5%)の空間分布

以下の図は2004年9月5日23時57分に紀伊半島南東沖(東海道沖)で発生した地震(Mj7.4)による観測地震動の周期1秒,2秒,5秒,6秒,8秒,10秒における擬似速度応答スペクトル(減衰5%)の 空間分布を示しています. 強震記録はK-NET,KiK-net(地表),関西地震観測研究協議会(関震協,CEORKA)及び港湾地域強震観測のものを使用しました. 図中の赤い★印は気象庁によって決定された震央の位置です. 解析に用いた各強震観測点の位置に対応する○印の色が地震動の強さを表しています. あくまで,これらの値は,観測点の位置での地震動の強さであることにご注意ください.

大阪湾岸地域では周期6秒付近で応答が大きくなっています.これは,今回の地震の震源から6秒程度の周期の長周期地震動が生成されたことに加え,大阪盆地の堆積層による 地盤構造が周期5〜6秒の地震動を増幅させる性質を持っているためと考えられます.特に,大阪湾の人工島の一つである舞洲に設置されているKiK-netのOSKH02(此花)という観測点で は周期6秒での擬似応答速度が東西成分で50cm/sを超えています.周辺の関震協観測点(福島,森河内,尼崎,阿倍野,堺)でも擬似応答速度30cm/s以上を記録しています. さらに長い周期(8秒〜10秒)になると,関東平野での地震動が目立つようになります.

また,他の地域では,静岡県の沿岸部でも大きめの値が得られています. 特に,K-NETのSZO017(浜岡)が顕著です. 富山湾周辺でも周囲よりも相対的に地震動が大きくなっています.

長周期地震動の増幅特性をより定量的に把握するためには,距離減衰の効果と地盤構造による増幅効果を分離する必要があると考えられます.

2004/9/13 追加

港湾地域強震観測(独立行政法人港湾空港技術研究所)による記録を追加しました. 六甲アイランド(六甲-G)で,周期6秒の応答速度がNS成分で78cm/sになっており,KiK-netのOSKH02(此花)を上回っていました. 周辺の,大阪港及び大阪南港でも50cm/s弱の応答速度となっています.


大阪湾周辺の観測点での卓越周期についてはこちらをご覧ください.

以前公開していた,近畿・東海地域のコンターマップはこちらです (19時7分の地震もあります)


擬似速度応答スペクトルの空間分布 擬似速度応答スペクトルの空間分布 擬似速度応答スペクトルの空間分布 擬似速度応答スペクトルの空間分布 擬似速度応答スペクトルの空間分布 擬似速度応答スペクトルの空間分布

強震観測点における擬似速度応答スペクトルの距離減衰

下の図は9月5日23時57分の地震(Mj7.4)による観測地震動の周期0.5秒,1秒,2秒,3秒,4秒,5秒,6秒,7秒,8秒,9秒,10秒の擬似速度応答スペクトル(減衰5%)と 震源距離の関係を示しています. 強震記録は上図と同様に,K-NET,KiK-net(地表)及び関震協(CEORKA)を使用しました.

短周期では,比較的単調に減衰している様子が分かります. 長周期になると,震源距離200km付近(大阪平野や濃尾平野に対応)や400km付近(関東平野に対応)に,他の観測点に比べ, 大きめの値を示す観測点が存在することが分かります.

擬似速度応答スペクトルの距離減衰

2004/9/14 修正

震源距離の計算に誤りがありましたので上図を差し替えました.


謝辞: 独立行政法人防災科学技術研究所のK-NET及びKiK-net,関西地震観測研究協議会及び独立行政法人港湾空港技術研究所の 強震記録を使用しました.関係者の皆様に感謝いたします.

(京都大学防災研究所 地震災害研究部門 強震動地震学分野 浅野 公之・山田 伸之・岩田 知孝)