大阪堆積盆地での観測地震動による震動特性について

2004年9月13日21時30分作成
2004年9月13日23時30分一部修正


擬似速度応答スペクトル(減衰5%)の卓越周期の空間分布

下の図1は2004年9月5日23時57分に紀伊半島南東沖(東海道沖)で発生した地震(Mj7.4)による観測地震動の擬似速度応答スペクトル(減衰5%)の最大値をとる周期を地震動の卓越周期と見なし,その空間分布を示しています. 強震記録はK-NET,KiK-net(地表),関西地震観測研究協議会(関震協,CEORKA)及び港湾地域強震観測のものを使用しました. 解析に用いた各強震観測点の位置に対応する○印の色が卓越周期,大きさが地震動の強さを表しています. 図1の左側が東西成分,右側が南北成分の結果を表しています.

この図から,今回の地震において,大阪湾岸地域での地震動の卓越周期は6秒前後であることが分かります. また,大阪市湾岸から堺方面は卓越周期3〜4秒,淀川沿いから京都(久御山),及び奈良市街地でも3秒前後の卓越周期を持っています. ある観測点で東西,南北成分において応答値が違っていて,その傾向は観測点によって違うことから,大阪盆地内では複雑な地震動伝播が起こっていると考えられます.

なお,関震協の観測点は速度計を使用しており,加速度では振動が収束して収録が終わってしまうような後続波の後ろの方までしっかりと記録されています. 加速度計を使用している観測点で は,速度波形で見たときの後続波が途中で切れてしまっている観測点もあり,そのような観測点での本来の速度応答スペクトルの推定と異なっている可能性もあります. 参考のため,主要な観測点の速度波形を図2に示しておきます.


図1:擬似速度応答スペクトルの卓越周期

擬似速度応答スペクトルの卓越周期

図2:主な観測点での速度波形(0.05-20秒) 左がEW成分,右がNS成分

速度波形EW成分 速度波形NS成分

(注)時刻は絶対時刻ではなく,見た目で適当に並べているだけです. Rokko: 六甲アイランド,AMA: 関震協尼崎,OSKH02: KiK-net此花,Osaka:大阪港,Osaka-Minami: 大阪南港, FKS: 関震協福島,MRG: 関震協森河内,YAE: 関震協弥栄,KYTH07: KiK-net久御山.


謝辞: 独立行政法人防災科学技術研究所のK-NET及びKiK-net,関西地震観測研究協議会及び独立行政法人港湾空港技術研究所の 強震記録を使用しました.関係者の皆様に感謝いたします.

(京都大学防災研究所 地震災害研究部門 強震動地震学分野 浅野 公之・山田 伸之・岩田 知孝)