Reporter: | 緒方夢顕 |
Title: | Viens, L., Jiang, C., and Denolle, M.A. (2022), Imaging the Kanto Basin seismic basement with earthquake and noise autocorrelation functions, Geophysical Journal International, 230(2): 1080-1091, https://doi.org/10.1093/gji/ggac101 |
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地震動予測には堆積層の厚さや内部構造についての詳細な情報が必要である.関東平野は深さ4 kmに強いインピーダンスコントラストを持つ基盤面があり,これまでにも幾つかの速度構造モデルが作られ,その基盤面の形状と内部構造を明らかにしてきた.
本研究では遠地地震のP波の自己相関関数 (ACF) とノイズのACFを計算し,関東平野のP波反射応答を求め基盤深度をイメージングした.また,シミュレーションを用いて,ACFをとる波動場の影響及び地震ACFとノイズACFの差について調べた. ACFの計算にはMeSO-netの観測記録を用いた.地震ACFはMw 6以上などの条件の下50イベントから計算し(バンドパスフィルター:0.1-1 Hz),phase-weighted stacking (PWS)を行った.ノイズACFは30日間のデータを2分ごとに分け,地震ACFと同様にACFを計算し,PWSを行った.地震ACFにはP波の1回反射(2p)を示す明瞭な負のピークが見られた.一方,ノイズACFでは震源時間関数の影響が見られたために各地点から20 km内にある地点のノイズACFの線形平均を差し引くと,2p2や2p3が明瞭になった.ノイズACFを1-3 Hzのバンドパスフィルターで同様に求めると,明確な位相が見えなかったため,関東平野では高周波数のP波が減衰されることが考えられる. 地震ACFとノイズACFから推定されたP波走時から基盤深度を計算しJIVSM (Koketsu et al., 2008, 2012) による基盤深度と比較すると,平野南部ではJIVSMよりも浅い結果となったものの概ね良く一致した. 地震ACFとノイズACFの性質の違いを把握しどちらがより良いかを調べるためにシミュレーションを行った.速度と密度はJIVSMを参照し,計算にはAxitraパッケージ (Cotton & Coutant, 1997) を用いた.地震ACFの震源は観測点直下の深さ10 kmの位置に,ノイズACFの震源は地表に置いた.実データと同じ手順でそれぞれのACFを計算した結果,時間・周波数領域共に実データで見られた主な特徴をそれぞれ再現できた.震源の深さ,すなわち波動場の性質が自己相関関数に大きな影響を及ぼすと考えられる.また,シミュレーションによるノイズACFではおそらく内部反射の影響で一部の2p3位相が消えていたため,その影響の少ない地震ACFの方が関東平野の地下構造を正確に表すと考えられる. |