Reporter: | 緒方夢顕 |
Title: | Maeda, Y., and Watanabe, T. (2022), Estimating errors in autocorrelation functions for reliable investigations of reflection profiles, Earth, Planets and Space, 74:48. https://doi.org/10.1186/s40623-022-01606-5 |
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観測点に鉛直入射する地震波の自己相関関数は,地下の反射面をイメージするために用いられる.反射応答は,ディラックのデルタ関数と自己相関関数の差のラグタイムが正の部分として求められる.しかし,自己相関関数から求めた反射応答には媒質中での多重散乱やノイズによる誤った信号が含まれることがある.
本研究では,ノイズによる自己相関関数の誤差を定量化し,高い信頼性を持つ反射応答を抽出する方法を提案している. P波到着時刻以前のノイズウィンドウ内の観測波形の振幅を計算し,この振幅を持つ1000個のランダムノイズトレースを生成した.この1000波形をそれぞれ観測波形から引き,個々の自己相関関数を計算し集合平均と標準偏差を求めた.これをもとに多くの地震について反射応答を計算し,重み付きスタックを行った.なお,ランダムノイズと観測波形は同じ時間幅を取り,two-pole zero-phase Butterworthバンドパスフィルタを掛け,更に波形の両端にコサインテーパーを掛けた. 手法の評価は,MeSO-netの地震データに適用することで行った.まず,付近の既往のボーリング調査により地下の不連続面の深さが分かっている観測点に適用した. S-P時間を10秒以上にするため震源深さ80 km以上,また鉛直入射を考えるため入射角5°以下,(おそらくSN比を大きくするため)M2以上の地震の記録を用いた.結果,反射応答の標準偏差と集合平均の比は地表付近と不連続面の深さ付近で3より大きくなり,スタック数が増加するほどそのピークは顕著になった.この3という値は,自己相関関数が正規分布に従うならば99%の信頼水準を与えるものである.また,周波数が大きくなるほどピークは不明瞭になった.次に,MeSO-netの観測点の内,東北東-西南西と東南東-西北西に連なる観測点を選び,2つの線について2次元反射プロファイルを作成し,従来手法と比較を行った.その結果,従来手法よりも反射面は明瞭になった.一方,その明瞭なイメージングは中間層(ここでは三浦層群)が薄く,2層構造に近似できる場所でのみ得られた. 本研究が提案した手法により,自己相関関数の振幅の意味が明確になり,反射面の信頼性に定量的な尺度を与えることができた.また,特に調査や研究が不十分な地域で主要な反射面を検出するのに有効ではないかと述べられている. |