Reporter: | 福留脩太 |
Title: | Can Oren and Robert L.Nowack(2017) Seismic body-wave interferometry using noise autocorrelations for crustal structure Geophysical Journal International, Volume 208, Issue 1, 1 January 2017, Pages 321–332, https://doi.org/10.1093/gji/ggw394 |
Summary: |
地震波干渉法は地球内部の構造を知るうえで非常に強力な手法の一つであり,相互相関を用いた研究は数多くなされているが自己相関を用いた研究の数は限られている.本研究の目的は微動の自己相関関数を用いた地震波干渉法の理論を確立することである.
Ruigrok et al. (2011)では地震波干渉法を微動に応用してモホ面のP波反射波の検出を行い, Zhan et al. (2010)ではS波のモホ面での反射波の検出が行われた. Tibuleac&von Seggern(2012)では微動の自己相関関数を用いてネバダでPmP,SmS両方の検出が行われた.本研究ではこの先行研究と異なるデータの処理を行い,結果を比較することで手法の正当性を確認している. データはUSArray EarthscopeのTransportable Arrayで記録されたデータを使用.このデータを一時間ごとの切り,線形なトレンドと平均を取り除き,振幅の情報を取り除くためにsign-bit normalizationを施す.以上の処理を行ったデータの振幅スペクトルは二つのピークを示す.これは海の波によるものと考えられ,自己相関関数の結果に影響を与える可能性があることから,こういった影響を取り除くためにスペクトルホワイトニングを行う.まず連続記録の自己相関関数を計算し,期待する応答を残すように調整したガウス窓を適用,もとの自己相関関数の振幅スペクトルをガウス窓を適用した自己相関関数の振幅スペクトルで割る.本研究ではこれら一連の処理をスペクトルホワイトニングとしている.本研究では二種類のパルス波を用いた合成波実験を行った.その結果からホワイトニングによって望ましくないスペクトルのピークが抑えられ,かつ必要とする反射波の応答の情報は維持されていることが分かった.ホワイトニングを行わない解析の結果と比較することでホワイトニングによって応答をより明瞭にとらえることができることが分かった. 次にネバダでの実際の一時間ごとの連続記録に以上の処理を適用し,自己相関関数を計算,その一時間ごとの結果を一日分スタックしさらにその一日ごとのスタックを一か月分スタック,さらにそれらを一年分スタックし,結果を比較した.一時間ごとの自己相関関数からもTibuleac&von Seggern(2012)と合致する応答が検出され,スタックを長くとるにつれてそれらの応答がより明瞭にみえることが明らかになった.また同様の解析をアメリカ中部の三地点でも行った.この地点ではCRUST1.0を基にして地下構造を仮定し,合成波を用いた実験と実際のデータを比較している.この3地点でもネバダと同様にスタックを用いることによってPmP,SmSの応答が明瞭になることが明らかになった.その結果からこの3地点ではモホ面の深さが約46kmと推定され,CRUST1.0の値と近い結果となっている.またこれら3地点の解析では用いる周波数の幅を変えその結果を比較することで0.3-0.55Hzが最も良い結果になることがわかった. 以上の結果からデータの処理とスペクトルホワイトニング,スタックといった手法を適用することで自己相関関数によって反射波をより確実に検出することが可能であることが明らかになった. |