2019年6月27日の雑誌会
Report of Zassikai on June 27, 2019

日 時:2019年06月27日(木)10:00 -
[DATE: June 27, 2019 (Thu.) 10:00 - ]

場 所:防災研究所セミナー室III E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI seminar room III, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 福留脩太
Title: Thanh-Son Pham and Hrvoje Tkalcic (2017) On the feasibility and use of teleseismic P wave coda autocorrelation for mapping shallow seismic discontinuities Journal of Geophysical Research: Solid Earth,122,3776-3791, https://doi.org/10.1002/2017JB013975.
Summary: ある観測点で観測される遠地地震の地震波記録は、観測点付近の地表面と不連続面での反射波を含んでいる。地表面で反射した波が地下の不連続面で反射し観測点に到達するため、それらの反射波は観測点に直接到達する波と比較して不連続面より上の層の厚さと地震波のスローネス、波線パラメーター、反射の回数に依存した走時差をもつ。これらは地震波記録の自己相関関数によって検出できると考えられる。
本研究では自己相関関数によって地下の不連続面を検出することの実用性を示すために、南極と、南アフリカのKaapvaal cratonの二か所において既存のモデルから人工的に作成した合成波と実際の地震波記録のそれぞれの自己相関を取り、それらの比較によってそれぞれ氷床岩盤境界と、モホ面といった不連続面が検出できているかを検証した。データの処理では地震波の地球内部の伝播で高周波数成分がより減衰することによる地震波記録の周波数成分の偏りを解消するために重み付け関数を用いたSpectral Whiteningを行い、その際予期しないノイズが発生することを抑止するためにzero-phase バンドパスフィルタを用いた。
一つのイベントによる地震波記録はノイズが多いため、反射波のシグナルを検出することは難しい。そのため、本研究では一つの観測点で観測された様々なイベントの自己相関関数をスタックしてシグナルを検出した。スタックでは、反射波のシグナルをより明瞭に検出するためにPhase-weighted stacking method(PWS)を用いている。
まず、自己相関関数によって反射波のシグナルが検出できるかを検証した。ランダムな波形と既存のモデルから作成した観測点でのインパルス応答をコンボリューションして、人工的に震動記録を作成、その自己相関関数をスタックして検証という合成波形実験を南極、南アフリカ両地点で行った。結果は両方のスタックに反射波のものと考えられるシグナルが検出され、それらの走時差はモデルでの波の速度、不連続面上部の厚さと調和的なものであった。南極においては層の厚さや波の速度が小さいために走時差の波線パラメーターへの依存性が無視できるほどとなっており、走時差からVp/Vsの値を直接求めることができることを示唆している。南アフリカにおいては走時差の波線パラメーターへの依存性が確認でき、その影響を波の入射角によって補正することで波線パラメーターに依存しない、すなわち震央距離に依存しない結果を得られている。(この点に関しては補正前のデータから波線パラメーターの依存性を読み取ることが難しく、補正による変化もほとんど無いようにみえたため、疑問が残る。)また、本研究ではSpectral Whitening を行わない場合との比較も行っていて、そのままスタックしたものに比べて、Whitening によってシグナルがより明瞭に検出できている。
次に、実際のイベントによる地震波記録の自己相関関数を求めて、合成波形実験の結果と比較して自己相関関数による地下不連続面の検出の実用性を検証した。震央距離30°以上の遠地地震の記録をGlobal centroid moment tensor catalog(GCMT)から選びだした。記録は震央距離30°~95°のteleseismic data setと震央距離120°以上のglobal teleseismic data set の二つに分けられる。
南極ではteleseimic data set から50の上下動記録と36の水平動記録、global teleseimic data set から12の上下動記録を得て、南アフリカではteleseismic data set から80の上下動記録と60の水平動記録、global teleseimic data set から65の上下動記録を得た。これらの記録の自己相関関数のスタックはいずれも合成波形実験のものと類似した結果を示しており、地下の不連続面の深さや波の速度などと調和的な結果を示している。実際のデータでは個別の記録の自己相関関数はノイズが非常に多くなっているが、スタックでは明瞭なシグナルが示されている。また、南極ではglobal teleseimic data set は12の記録しか得られなかったが明瞭なシグナルを示しており、自己相関関数によって地下の不連続面を検出する実用性が示されている。自己相関関数は南極の氷床といった薄い低速度な構造にも有効であったため、堆積層などの構造にも応用できると考えられる。

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