Reporter: | 永井夏織 |
Title: |
Zachary E. Ross, Hiroo Kanamori, Egill Hauksson and Naofumi Aso (2018)
Dissipative Intraplate Faulting During the 2016 Mw 6.2 Tottori, Japan Earthquake Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 123, 2, 1631-1642, https://doi.org/10.1002/2017JB015077. |
Summary: |
2016年10月21日に鳥取県中部でMw 6.2の地震が発生した。本研究ではMatched-filterアルゴリズムを用い、この地震系列について震源決定を行った。
また経験的グリーン関数法を使って本震の破壊過程を推定し、地震活動分布との比較を行うことと、地震エネルギーを算出し、既往の地震との比較を行った。
Matched-filterアルゴリズム(Ross, Rollins, et al., 2017)により連続データから未決定の地震を検出した。気象庁カタログの9,639地震をテンプレートとして使用した。 検出した地震と近傍のテンプレート地震との相関を計算し走時差を求め、GrowClustアルゴリズム(Trugman & Shearer, 2017)を使って走時差から震源を再決定し、総計20,039地震の再決定に成功した。 再決定した地震活動の分布は、深部では局所化し地表面に描画するとはっきりとした線が複数ほぼ平行に並ぶ一方で、浅部では水平方向にかなり広がっている。 経験的グリーン関数(EGF)法を使って強震記録からみかけの(各観測点の)震源時間関数(STF)を求めた(Ross, Kanamori, & Hauksson, 2017)。 Mj 4.2の前震をEGFとして伝播とサイトの影響をデコンボリューションした。解析に用いた全ての観測点におけるSTFに大振幅のパルスが見られた。 パルスのピークは340°断層の走向方向でもっとも早く、160°近くでもっとも遅くなり、これらの特徴は破壊の伝播効果に見える。 求めた各観測点のSTFsを使って線形すべりインバージョン行った(Ross, Kanamori, & Hauksson, 2017)。最大すべりは5.3 m、大すべり域は直径約4 kmと推定された。 すべり域は震源について非対称で、この特徴はSTFの1つ目の大きなパルスと調和的だ。STFの2つ目のパルスは各観測点で系統的な特徴がなく、このパルスから求めたすべりは局在化せず広がっている。 余震分布はすべり分布と相補的であることが多くの研究で示されており、本研究のインバージョン結果でも大すべり域は余震分布の輪で囲まれている。 すべりモデルを使って、Ye et al. (2016) の方法により、破壊伝播速度1.8-2.9 km/sに対して静的応力降下量18-27 MPaが求まった。 一方STFから地震エネルギーは4.1×1013 Jと推定され、放射効率は5.1-7.7 %になった。 再決定した地震活動の分布は珍しく、浅部では断層から15-20 kmも離れたところにも広がり深部では局所化している。これは断層の未成熟さと関係があると考えられる。すべりインバージョンの結果から求めた放射効率は低く、その理由についてはさらなる研究が必要だ。 インバージョン結果の最大滑りが5.3 mと大きいことについて、妥当性もしくはその推定精度の説明が欲しい。 著者らは強震波形を用いた震源インバージョンを行ったKubo et al.(2017)について、破壊前方の観測点SMN018とSMN019を解析に使っていないことから、前方指向性が効いている観測記録がなく、北西方向に破壊伝播した本研究との違いを指摘しているが、詳しい議論がない。 |