2014年12月11日の雑誌会
Report of Zassikai on December 11, 2014

日 時:2014年12月11日(木)10:30 -
[DATE: Deceber 11, 2014 (Thu.) 10:30 - ]

場 所:防災研究所大会議室 S-519D室 (本館S棟5階)
[PLACE: DPRI conference room, S-519D]

雑誌紹介

Reporter: 田中宏樹
Title: I. Kurzon, F. L. Vernon, A. Rosenberger, and Y. Ben-Zion (2014)
Real-Time Automatic Detectors of P and S Waves Using Singular Value Decomposition
Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 104, No. 4, pp. 1696?1708, August 2014, doi: 10.1785/0120130295
Summary:  地震の自動検出は最も基礎的かつ重要な作業である。これは、リアルタイムでイベントを引き抜き、そのカタログを作るものであり、そのためにはまず、信頼できるDetection(検出)法を作ることが必要である。既往の方法として、シグナルノイズ比(SNR)に基づいたDetection アルゴリズムがあるが、このDetectorsでは、各成分が独立に利用され、結果的に、P, S波の識別に対する信頼度が低く、多くのイベントがカタログから抜け落ちてしまっている。こうした問題を改善してくれる方法として、三成分波形解析があり、三成分データのタイムウィンドウから構成される行列の特異値分解(SVD)を求めるものである。実用的な方法として、Rosenberger(2010)の方法が使われる。
 Rosenberger(2010)では、波形をP, S phaseに分けるために、三成分の生波形に特異値分解を適用した。本論文では、San Jacinto断層帯に沿った観測点で、アルゴリズム性能をテストした。イベントは2005.6のMw5.2の余震系列である。その結果、震央距離が1kmより短い場合に対しては、P, Sが正しく分離でき、断層破砕帯にある観測点では良い性能は得られなかった。そこで、@2Hz(4次)~30Hz(5次)のフィルター、A3Hz(4次)~8Hz(4次)のフィルターを用意し、そのフィルターを掛けてからSVD アルゴリズムを適用させてテストした。断層帯から50m以上の観測点では、@でうまく分離できたが、50m以内の観測点ではうまく分離できず、Aを用いたところうまく分離できた。
 SVD Detectionにより、P, S phaseを分けることはできたが、次にP, Sの初動を決定しなくてはならない。P-, S-Detectorsは、特異値分解の簡単な性質を利用した、特異値・特異値の時間導関数・入射角の余弦の3つの変数の条件や閾値をそれぞれ設定し、P, S波を決定する。断層線上の観測点を除いて、@だけでP, Sがよく決定された。
 前述は既知のイベントを再解析する点でよいツールであったが、既知情報がないリアルタイム検出には向いていない。そこで、本論文では、以下のプロセスに従った新しいSVD Detectorsを考える。@生データに低カットオフ周波数側に4次、高カットオフ周波数側に5次の2~30Hzリアルタイムバンドパスフィルターをかける。ASVD アルゴリズムを@に掛ける。BSNR DetectorsをAで走らせる。これらを、上記余震列の最初80分の294イベントで性能をテストしたところ、P, Sの決定具合はほぼ完璧であった。しかし、S波は水平2成分(チャンネル)で決定され、1イベントに対して最大2つのS Detectionが存在するため、0.5秒のタイムウィンドウスキャンを行い、最大SNRを持つDetectionをS Detectionとして決定するクリーニング作業が必要である。クリーニングを行うことで、イベント決定率が31%から37%に上昇し、既往のSNR Detectors; 11%の3倍以上の性能を示した。マグニチュード分布を比較すると、マグニチュードが小さい地震ほど進歩率が顕著で、SNRでは決定できなかったM<0のイベントがSVDから決定できるようになった。さらに、イベント決定数を増やすために、一度位置決めをした後に、近接点をSubnetとして定義し、それらを優先的に用いる方法もある。これらの方法でテストを行うとイベント決定率が50%に上がり、1イベントを決定するのに必要なphaseも最も少なくて済む。しかし、その近接性などから、マグニチュードが大きいイベントは小さく見積もられてしまう問題もある。
 これらのDetectionを他の地域に適用するときは、フィルターに適切な調整をする必要がある。また、広域・遠地地震に関しては、さらなるフィルターの調整とテストが必要である。これらの新しいSVD Detector手法は、世界中の地震カタログの完全性、有用性を向上させる可能性を秘めている。

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