Reporter: | 佐藤佳世子 |
Title: | Ken Miyakoshi, Masanori Horike, and Ryoji Nakamiya (2013) Long Predominant Period Map and Detection of Resonant High-Rise Buildings in the Osaka Basin, Western Japan Bulletin of the Seismological Society of America, 103, 247-257, doi: 10.1785/0120110334 |
Summary: |
西日本に位置する大阪盆地は,大阪湾部分で最大3km,陸地部分で最大1.8kmの厚さの柔らかい堆積物で構成された代表的な盆地である.このような表層地質的背景から盆地内で数分間の長い継続時間を持った強い長周期(1秒以上)地震動が卓越する.将来起きると考えられる(M8以上の)巨大なプレート間地震である南海地震,東南海地震によって引き起こされる,長周期の固有周期をもつ構造物に対する地震被害の軽減の為,筆者らはアレイによる地震動記録と3次元堆積盆地構造モデル(Yamada and Horike, 2007)を使う事によって大阪平野の地震動卓越周期のマップを作成するとともに,このマップを用いて危険な高層ビルを検出した.
本論文では,大阪盆地内の観測記録から観測点毎の地震動のピーク周期を推定し,その後,3次元堆積盆地構造モデルから観測点毎の卓越周期のマップを作成している.まず,各観測点での地震動の卓越周期を,一定以上大きな(おおよそM6.5以上)地震イベントの記録を用いて,3つの方法で推定した.その上で,目的である長周期表面波に対して最も有効な方法として水平成分のフーリエ振幅スペクトルの値からピーク周期を推定する方法を選択した.次に観測記録から推定されたピーク周期とモデルから推定されるラブ波のサイト応答のピーク周期を比較した.この際に生じているミスフィットを解消する為,筆者らはモデルから得られるサイト応答のピーク周期を空間的にスムージングすることを試みた.この空間的なスムージングは波長λに対して0.9λの半径の円形エリアのモデル卓越周期を一様な重みづけで行うものである.この操作によって観測ピーク周期とモデルピーク周期の一致度が上がる事から,モデルピーク周期を同様な方法でスムージングすることによって,卓越周期マップを作成した. 既存の3次元盆地構造モデルを基にマップを作成しているので,大阪盆地だけでなく基盤岩と堆積層のインピーダンス比が大きい,つまり,盆地生成表面波を効果的に発生させる事ができ,伝播経路や震源の影響を無視できると仮定できる盆地でも同様のマップを作成する事ができると筆者らは考えている.このようなマップは長周期地震動と共振する危険な高層建造物の存在を容易に検出できるなど地震ハザードの面で役に立つだろう. |