2013年6月13日の雑誌会
Report of Zassikai on June 13, 2013

日 時:2013年06月13日(木)10:30 -
[DATE: June 13, 2013 (Thu.) 10:30 - ]

場 所:防災研究所セミナー室III E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI seminar room III, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 田中美穂
Title: David D. Oglesby and P. Martin Mai (2012) Fault geometry, rupture dynamics and ground motion from potential earthquakes on the North Anatolian Fault under the Sea of Marmara Geophys. J. Int.,188,1071-1087, DOI:10.1111/j.1365-246X.2011.05289.x
Summary: トルコ北部のマルマラ海のNorth Anatolian断層(NAF)ではこの230年大きな地震は起きておらず,イスタンブールなど周辺地域に対する地震ハザード評価が喫緊の課題である.マルマラ海のNAFはstepover部分を含む複雑な幾何形状をしており,この断層の幾何を考慮した解析が必要である.Oglesby et al. (2008) では,起こりうる地震の動的破壊を3次元有限要素法を用いて調べた.彼らの研究において,マルマラ海の複雑な断層幾何が,破壊がどの範囲まで伝わるかをコントロールするということが明らかになった.具体的には,破壊開始点がstepoverセグメントから遠いと,破壊に不都合なstepoverセグメントを破壊は伝播し,近いと破壊は伝播しないという傾向が見られた.
本論文では,Oglesby et al. (2008)と同じ方法を用いて,(1)地震の大きさに対する応力場の方向の影響,(2)地震動に対する断層幾何の影響,(3)supershearの破壊伝播の新しいメカニズムについて詳しい考察を加え,まとめている.(1)については,広域応力場を時計回り,反時計回りに10°回転させた場合の最終的なすべり分布を比較し,広域応力場の違いによってあるセグメントが破壊を伝えたりバリアのようにふるまったり変化するということが明らかとなった.(2)では地震動シミュレーションによって得られた最大地動速度分布から,断層のコーナーの内側で地震動が大きくなるという傾向を見いだした.(3)では,破壊伝播の速度,破壊時刻に着目し,動的な破壊によって応力が減少し,強度の低下に伴ってsupershearの破壊に好都合となると結論した.
DISCUSSIONでは,将来の地震のダイナミックな特性を予測するには運動学的なモデルに基づくものではなく,動力学的なモデルに基づく評価が必要であると述べている.その説明として,テクトニックな応力場では破壊に不都合なセグメントに破壊が伝播するかどうかはダイナミックな応力場との相互作用によるという点,supershearへの変化は法線応力のダイナミックな減少による影響だという点,キネマティックインバージョンからはruptureフロントの伝播について言及することは非常に難しいという点を挙げている.また,与えられた断層系上で将来起きる地震の特徴の予測には,断層近傍の広域応力場とその回転している可能性を正確に知ることが重要だとも述べている.

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