Reporter: | 久保久彦 |
Title: | Lay, T., H. Kanamori, C. J. Ammon, H. Yue, K. D. Koper, A. R. Hutko, and E. E. Brodsky (2012) Depth-varying rupture properties of subduction zone megathrust faults, J. Geophys Res., 117, B04311, doi:10.1029/2011JB009133 |
Summary: |
沈み込み帯で発生するプレート境界型巨大地震におけるすべり破壊の挙動は空間的に異なる.2004年スマトラ地震(Mw 9.2)や2010年チリ地震(Mw 8.8),2012年東北地震(Mw 9.0)において,短周期の遠地地震波が深い領域から特に放射される一方で,浅い領域では短周期地震波の放射は比較的少ないが,大きなすべりが見られるという地震波放射の深さ変化がそれぞれで見られた.
これらの震源特性およびほかの深さ変化を持つ地震学的特徴から,著者らは海溝からseismogenic zoneのdown-dipの端までの領域を傾斜方向に四つの破壊領域に分類した.15qよりも浅い領域を領域A,深さ15qから〜35qまでの領域を領域B,深さ〜35qから55qまでの領域を領域Cと呼ぶ.領域Aでは非地震性変形もしくは大きな地震時すべりを伴う津波地震が起きている.津波地震が起きる.領域Bでは,地震時に大きなすべりが広い領域で起こるが,短周期地震波の放射は穏やかである.領域Cでは(領域Bより)小さく,孤立したpatchの破壊が支配的である.巨大地震や中規模地震の際に,短周期地震波がこのpatchから放射される.2011年東北地震においては,短周期の遠地地震波が放射された場所は,ローカルな強震動を励起した場所に近い.領域Dは,比較的若い海洋プレートが浅い傾斜角で沈み込んでいる地域(例えば,南西日本やカスケード地方,中央アメリカ)の深さ30qから45kmまでで見られ,脆性破壊と塑性破壊の遷移領域であり,深部低周波地震や微動,スロースリップが発生する. さらに,上記の領域分けを支持する観測・解析結果(震源特性や地震波マグニチュード/モーメントマグニチュードの深さ変化,巨大地震において放射される遠地短周期地震波の傾斜方向の変化,傾斜方向に位置が異なる中規模地震の遠地および近地地震波形のスペクトルの違い,傾斜方向に位置が異なる地震の地震モーメントあたりの地震波放射エネルギーの違い)を示し,議論を深めていく. |