2009年11月12日の雑誌会
Report of Zassikai on November 12, 2009

日 時:2009年11月12日(木)10:30 - 12:30
[DATE: November 12, 2009 (Thu.) 10:30 - 12:30]

場 所:防災研究所セミナー室III E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI seminar room III, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 山下 佳穂里 [Kaori YAMASHITA]
Title: U.Wegler,H.Nakahara,C.Sens-Schonfelder,M.Korn and K.Shiomi (2009)
Sudden drop of seismic velocity after the 2004 Mw 6.6 mid-Niigata earthquake, Japan, observed with Passive Image Interferometry
J. Geophys. Res., 114, B06305, doi:10.1029/2008JB005869.
Summary:  Sens-Sconfelder and Wegler(2006)はノイズの相互相関関数から干渉法によって得られたグリーン関数の後続部分も散乱された波を表現するグリーン関数であることを示した.この部分を用いることにより,直達波でない情報を得ることができる手法,Passive Image Interferometry(以下PII法)を提案した.この手法で相関を計算することによって,ある基準波形と記録の相対速度変化(δv/v)が求められることも示した.そこでWegler et al.(2009)ではPII法をKZK(F-net)と5つのHi-net観測点で観測された2004年新潟県中越地震(Mw6.6)に適用し,地震前後での速度変化を0.1%の解像度で調べた.
 まず0.1-0.5Hzと2-8Hzの周波数帯で1日ごとの自己相関関数を計算した.さらに0.1-0.5Hzでは相互相関関数を計算し,地震前の二ヶ月間と地震後の二ヶ月間でスタックを行ったものをそれぞれのグリーン関数とした.次に,四ヶ月間の自己相関関数や相互相関関数を平均したものをそれぞれの基準波形とし,波形を伸縮させて速度変化を調べた.その結果,KZKでは最大-0.6%の速度変化となり,速度降下していることが分かった.
 速度変化の原因を調べるため,まずOkada(1992)の計算コードを用いて対象地域の地震による体積ひずみ変化を求めた.KZKは体積ひずみが正で伸長の領域となっており,速度降下が期待され,PII法の結果と一致した.しかしKWNH(Hi-net観測点)では,体積ひずみが負で収縮の領域となっており,速度上昇が期待されたがPII法の結果では速度が降下していた.次に地盤の非線形応答による速度低下の影響を考えた.非線形モデルによると速度は揺れの強さに依存する.しかし,最大加速度と今回PII法によって求められた速度低下率には特に関係性は見られなかった.
最後に,断層領域のダメージ(傷)による影響を考えた.速度降下率が大きいところは断層の近くに集中している可能性があり,今後さらに調べる必要がある.

Reporter: 岩城 麻子 [Asako IWAKI]
Title: Page, M. T., S. Custodio, R. J. Archuleta, and J. M. Carlson (2009)
Constraining earthquake source inversions with GPS data: 1. Resolution-based removal of artifacts
J. Geophys. Res., 114, B01314, doi:10.1029/2007JB005449.
Summary: この論文では,2004年Parkfield地震(MW6.0)のGPS記録から得られる地震時の静 的変位量を用いたすべりインバージョンにおいて,得られるすべり分布から,解 像度の不均質に起因する人為的なすべり(artifacts)をから除去するための手法 を提案している.
まず,数値テストによって解像度行列の空間分布を解析し,断層面上で解像度が 空間的に不均質であることを示した.この解像度の空間不均質性は観測点配置と 仮定した速度構造に依存しており,インバージョンの際に特定の領域に artifactsを生じさせる.データの数がモデルパラメータに比べて十分でない underterminedな逆問題においては,データに拘束されない自由なパラメータが このようなartifactsの生成を導くと考えられる.artifactsを生じさせないため には,解像度の低い領域で自由なモデルパラメータをできるだけ減らすことが重 要である.
そこで,断層面上の局所的な解像度の高さに応じた不等間隔な小断層配置を導入 した.解像度の高い地表付近の領域は小断層を細かくとり,断層の端や深い領域 では粗くとった.この不等間隔格子を導入してインバージョンの数値テストを 行ったところ,解像度の高い領域では精度を保ちながら解像度の低い領域での artifactsを除去することができ,等間隔な小断層配置の場合に比べて優れてい ることが示された.
最後に,実際のGPSデータを用いて不等間隔格子のインバージョンを行い,誤差 の解析を行った.

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