2008年5月8日の雑誌会
Report of Zassikai on May 8, 2008

日 時:2008年5月8日(木)10:30 - 12:30
[DATE: May 8, 2008 (Thu.) 10:30 - 12:30]

場 所:防災研究所D1219室(巨大災害研究センター会議室(本館新棟2階))
[PLACE: Room #D1219, DPRI]

卒業論文紹介

Speaker: 染井 一寛 [Kazuhiro SOMEI]
Title: 2006年大分県西部のスラブ内地震による強震動の特徴
Abstract: 島弧に特有の地下構造が地震波伝播に与える影響,すなわち「島弧のゆれ方」 を検討する一環として,2006年大分県西部のスラブ内地震(深さ145.17km,MJMA =6.2)の強震動記録を解析し,その特徴を調べた.
解析の結果,強震動分布では振幅の大きい領域が火山フロントを境に前弧側に 限定されるという特異な分布が確認できた.また,スペクトル解析では背弧側の 観測点で高周波数側の振幅が小さいという特徴が現れるなど,背弧側では前弧側 に比べて,高周波地震動が急激に減衰するという特徴が九州孤で系統的に見られ た.これは背弧側および火山フロント下に存在する低Q値領域によるものと考え られる.また,スラブの屈曲付近にあたるような中国地方西部でも高周波地震動 の減衰が確認できた.さらに,九州孤について,減衰の程度の違いを検討するた めに,震央を基準にとった各測線の波形記録を調べたが,背弧側では一様に高周 波数帯域の振幅の減衰が見られ,地域性による明確な違いは確認できなかった.
また,震源の深さによる違いを検討するために,2006年日向灘の地震(深さ 35km,MJMA=5.5)の記録についても少し紹介する.

雑誌紹介 [Paper Review]

Reporter: 浅野 公之 [Kimiyuki ASANO]
Title: Boatwright, J. (2007),
The persistence of directivity in small earthquakes, Bull. Seism. Soc. Am., 97, 1850-1861.
Summary: この論文は,カリフォルニア州のSan Ramon近傍の2つの地震クラスターで発生し たM3.5以上の7つの地震を解析し,このような小規模地震でもDirectivity効果 が観測記録から見いだすことができるかどうか調べたものである.
手法としては,各観測点で得られた地震波形の最大加速度や最大速度の距離減水 式からの残差を計算し,それらの残差をBen-Menahem(1961)のDirectivity functionにフィッティングさせ,破壊伝播方向と破壊伝播速度を推定した. その結果,最大加速度のデータセットを用いた解析では,7地震とも断層面が決 まった.最大速度を用いたデータセットでは,1つの地震をのぞき,断層面が求 まった.破壊速度は,地震によって違い,S波速度の17〜87%の範囲に推定され た.破壊速度の速い3地震は特に精度よく破壊方向が決まった.このように,こ の解析手法は,波形シミュレーションなどを用いることなく,断層面や破壊伝播 方向を求めることができる点が特筆すべき点である.このため,高周波数の卓越 する小地震の解析に向いていると考えられる.

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