2007年5月31日の雑誌会
Report of Zassikai on May 31, 2007

日 時:2007年5月31日(木)10:30 - 12:30
[DATE: May 31, 2007 (Thu.) 10:30 - 12:30]

場 所:防災研究所D1219室(巨大災害研究センター会議室(本館新棟2階))
[PLACE: Room #D1219, DPRI]

雑誌紹介

Reporter: 乘松 君衣 [Kimie NORIMATSU]
Title: Yong-Gang Li, Po Chen, Elizabeth S. Cochran, and John E. Vidale (2007)
Seismic velocity variations on the San Andreas fault caused by the 2004 M6 Parkfield Earthquake and their implications, Earth Planets Space, 59, 21-31.
Summary: アメリカ,サンフランシスコとロサンゼルスの中間にあたるParkfieldでは地震 観測,2色レーザー測距,歪計,傾斜計,クレープ計,磁力計,地下水観測など が集中して行われており,地震予知の場とされてきた.2004年,M6のParkfield 地震の前後に断層に沿うように約200mの幅,深さ 6kmのところで大きな地震波速 度変化があった.2002年に記録された微小地震とその後に繰り返し発生してい る,2004年M6の本震の1週間後に記録されたイヴェントの波形は断層域の観測点 において地震波速度降下が2.5%をピークとしている.これは地震の動的ラプ チャーの間に断層域の岩石がコサイスミックにダメージを受けたことに起因する と考えられる.さらに断層域における地震波速度は3−4ヶ月間の余震の繰り返 しの後には地震発生深度において 1.2%の上昇を示した.これは本震によってダ メージを受けた岩石が時間の経過とともに剛性を回復した,あるいはヒーリング することを示している.ヒーリング・レイトは一定ではないが本震直後でもっと も大きいとされている.

Reporter: 栗山 雅之 [Masayuki KURIYAMA]
Title: Glenn P. Biasi and Ray J. Weldon U (2006)
Estimating surface rupture length and magnitude of paleoearthquakes from point measurements of rupture displacement, Bull. Seism. Soc. Am., 96, 5, 1612-1623.
Summary: 地震規模や地表地震断層長は,断層沿いのある一地点で得られた変位量を平均値,最大値と仮定して回帰式から推定される場合が多い.本論文では,ある地点でX (m)の変位量が測定されたときに,地震規模Mの地震がその原因となった確率 (P (M|dobs)),地表地震断層長がL (km)であった確率 (P (L|dobs))がベイズの定理を用いて推定されている.例えば,2mの変位量が測定される場合は,地震規模がM7.0-7.2である確率が高く,地表地震断層長が50kmである確率が75%と予測された.こうした確率の分布を改善するために,地表地震断層が生じる確率を考慮し,地震規模に関するいくつかの事前確率モデルを導入している.地震規模の事前確率のモデルに,Gutenberg-Richterの分布を応用した場合には,一様分布を用いた場合に比べて,地表地震断層長はより短く,地震規模はより小さく見積もられることがわかった.一方,大きな変位量は大地震でのみ生じるという仮定を事前確率のモデルに組み込んだ場合には,一様分布の場合と比べて,地表地震断層長はより長く,地震規模はより大きく見積もられた.本論文の手法を地震危険度評価に用いる際には,どのようなモデルで事前確率を与えるかの十分な検討が必要であると考える.

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