釧路地方気象台における強震動と弱震動に対するサイト特性の評価
山本 みどり
1993年1月15日釧路沖地震(マグニチュード7.8)が起こり,震央に近い釧路では震度6を記録した.この時,釧路地方気象台内の地表に設置された地震計で最大水平加速度で711cm/s/sという非常に大きい振幅を記録した.このような大きい地震動が入射した時,表層地盤が地震動にどのような影響を与えるのか解明されていない部分が多い.地震動は表層地盤によって増幅されるが,その増幅度(サイト特性)は表層地質に左右されるだけではなく,入射する地震動の強さによっても違ってくる.つまり,入射地震動強さに対して表層地盤は非線型性を持っているのである.
今までに弱震動に対するサイト特性を求めた研究はいくつかあるが,それらは震源を点とみなせる場合にのみ適用可能であり,かつ,ある覿測点を基準点としなければならない.断層が大きく全ての観測点において震源特性が一様であると仮定できない場合やどの観測点でもサイト特性が非線型挙動をする可能性がある場合に対応できる研究はなされていなかった.本研究では,サイト特性の地震動強さ依存性を調べることを目的として,従来の方法と異なり,サイト特性の絶対値を求める方法を提案する.その方法とは,震源特性,幾何減衰を考慮して自由表面において得られると考えられるスペクトル特性と観測スペクトルとの比としてサイト特性を求めるというものである.この時,断層が大きい地震の場合は震源の破壊過程の各覿測点での影響まで考慮する.この方法を北海道南東部に位置する4つの観測点について釧路沖地震と中小地震の記録に適用し,それぞれの地震でのサイト特性を求め比較した.その結果,釧路地方気象台の観測点で弱震動のサイト特性に比べて釧路沖地震時のサイト特性に卓越周波数の低下,高周波成分の減少が見られることがわかった.