和歌山市直下の地毅浅部で発生する地震に見られる特徴的な後続波
稲葉 進
和歌山市直下の地殻浅部で発生する地震の和歌山市近傍の岩盤上での観測記録では、発震時より10秒から15秒にかけて、S波主要動後に後続波が確認できる。S波主要動後に見られる後続波は日光や伊豆東部のような火山地域において多く観測されている。これらは地殻内の不連続面からの反射波として解釈されて反射面の位置が求められている。この不連続面は地殻内部の熱的状態を反映していて地下の溶融体の上面に対応すると指摘されている。火山活動の見られない近畿地方ではどのように解釈できるだろうか。ここでは後続波が特定の場所におる散乱体からの強い散乱波であると考えて解析を試みた。
まず、後続波は特定の場所にある強い散乱係数を持った散乱体から単一散乱されたと考え散乱体の位置を准定する。次に、直達S波とコーダ波のスペクトルを移動経過時間窓ごとに求めて、移動経過時間窓に対応する球穀内の平均的な散乱係数を各周波数について求める。これらより、深さ22km、(135.24°, 34.16°)付近に周波数8Hzおよぴ16Hz帯域に強い散乱を生じさせる敢乱体が存在すると推定できた。この散乱体は2Hz,4Hz,24Hz帯域では強い散乱を生じさせない。
強い後方散乱を生じさせる散乱体としては波長より短いサイズのクラックや薄い遷移層などが考えられる。これらが特定の周波数域の波だけを散乱するような構造があれば、この現象は説明できる。
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