2000年度卒業論文

2000年鳥取県西部地震(MW 6.7)の気象庁マグニチュード(MJ 7.3)の考察

奈川 泰久


マグニチュードは、地震の規模を表す指標として広く用いられている。2000年10月6日の鳥取県西部地震では、気象庁マグニチュード(MJ)が7.3、モーメントマグニチュード(MW)は6.7(Harvard大学CMTによる値)で、乖離は0.6と大きなものあった。しかし、70年代末以降の主な地震(MW=6〜7)を見るとほとんど乖離は0.3以内に収まっている。本研究では、震央距離500km以内のK-net 298点の加速度記録に基づいて、実際に気象庁の算出方法に従ってMJを求めることによって、これだけの差が現れた原因を探ることを試みた。

本研究では、まずK-netで得られた鳥取県西部地震の加速度波形を2回時間積分した後10秒のハイパスフィルターをかけることにより、見かけ気象庁の地震計記録に直した。それからMJの決定方法に従って計算した。結果、MJは7.2となり、気象庁の報告値7.3とほぼ同じであった。

気象庁では、1995年、1998年とMJの決定に使用する周期帯を変更してきた。そこで、それぞれの周期帯でMJを計算したが、周期帯の違いによるMJの違いはあまり大きくなかった。

鳥取県西部地震では、Δ<500kmで震央距離の増加に伴って各観測点のMJが大きくなる傾向が顕著に見られた。他のM 6、7クラスの地震(兵庫県南部地震、北海道南西沖地震、千葉県東方沖地震)でも、Δ500kmでは同様の傾向が見られた。

しかし、震央距離Δと水平動最大振幅Aの関係を見ると、鳥取県西部地震ではlogA =−0.85 logΔ+ 6.06で、坪井の式の傾き−1.73より大きさがかなり小さかった。これは、距離減衰が坪井の式よりも小さかったことを示す。他のM 6、7クラスの地震ではこれほど大きな差は見られなかった。Δ500km以上での傾向を今後調べる必要があるが、原因としては、浅いところで大きなすべりが起こったため表面波が強く励起された可能性が考えられる。これは、震源の浅かった長野県西部地震でMJが大きくなったこととも調和的である。 また、大阪平野や濃尾平野、大分平野といった堆積盆地でMJが大きくなる傾向が確認できた。