2, 解析
解析には本震震央の北側(SIG002,SIG004),西側(KYT007,KYT010),南側(SIG006)に位置するK-NETの5観測点(震央距離約20km以内)の記録を用いた.東側には琵琶湖が広がり,近傍の観測点はない.初めに本震と余震の震源振幅スペクトル比に現れる破壊伝播指向性について調べ,破壊伝播方向の推定を行った.観測点が震央の北側,西側,南側になるにつれて本震のコーナー周波数は低くなり,スペクトル比の傾きが緩くなる傾向が見られており(Fig.1),破壊伝播方向と破壊領域の推定法[三宅・他,1999]に基づくと,本震は北向きのほぼユニラテラルな破壊であったと考えられる.
次に強震動生成領域(破壊領域)と領域内の破壊開始配置(震源の位置は固定),ライズタイムを変数とし,経験的グリーン関数法[Irikura,1986]を用いた加速度・速度・変位波形の強震動シミュレーション(1.0~10Hz)を行った.S波速度はHurukawa(1981)や伊藤・他(1995)を参考に3.4km/sと固定し,破壊伝播速度はS波速度の0.9倍とした.FREESIAの震源メカニズム解に従って2枚の断層面を仮定し,それぞれの場合について遺伝的アルゴリズムを用いて最適な震源モデルを求めた.なお本震と余震の大きさの比(N)は4,
応力降下量の比(C)は3.56を用いた.
3, 結論
震源振幅スペクトルの形状の方位・空間変化から,本震は北側へのほぼユニラテラルな破壊様式を持つことが推定された.後に行った強震動シミュレーションからも同様の結果が得られており(Fig.2),適切な余震を利用することによってM5クラスの地震の破壊伝播方向を推定することができると考えられる.断層面に関しては,2枚の断層面のそれぞれについて検討を行ったが,本手法によって合成された波形に明瞭な差は見られず,面を決定するには至らなかった.しかし,どちらの断層面を仮定した場合でも強震動生成領域は約1km(長さ)×1km(幅)であり,本震のライズタイムは約0.1秒,破壊伝播方向は北向きであるという結果が得られた.
4, 謝辞 解析にはK-NETの記録,FREESIAの震源メカニズム解,及び大阪管区気象台の震源情報を使用しました.記して感謝致します.
5, 参考文献 Hurukawa, JPE, 29, 519-535, 1981. Irikura, 7thJEES, 151-156, 1986. 伊藤・他, 京都大学防災研究所年報, 38 B-1, 49-59, 1995. 三宅・他, 1999年合同大会予稿集, Sg-P003, 1999.