2011年6月14日開設
2011年6月15日更新


2011年6月13日ニュージーランド南島クライストチャーチ付近の地震(Mw6.0)の強震動

協定世界時2011年6月13日2時20分(現地時刻6月13日14時20分)にニュージーランド南島のクライストチャーチ市の南東(深さ6km)でMw6.0の地震が発生した. この強震波形記録がGNS Scienceの運営するGeoNetから公開されているので,観測された強震動の特徴を整理し,2月21日の地震による強震動と比較した. GeoNetによって決められた震央は2011年2月21日23時51分(現地時刻2月22日8時51分)に発生し,クライストチャーチ市街地で大きな被害をもたらしたMw6.1の地震(深さ6km)の余震域の 東端付近に位置している.両者の震源メカニズムもよく似ている.

図1: ニュージーランド全体の計測震度分布(左:6月13日の地震,右:2月21日の地震)。

平成8年気象庁告示第4号に従って計算した計測震度から求められた日本の気象庁震度階相当値の空間分布を図1の地図に示した. 6月13日の地震も南島のほぼ全域で有感となった.広域の震度分布はよく似ている. 地図中にプロットしているメカニズム解はGlobal CMT ProjectによるCMT解である.

2011/06/13 02:20 Mw6.0 2011/02/21 23:51 Mw6.1
6月13日の計測震度の分布(ニュージーランド全体) 2月22日の計測震度の分布(ニュージーランド全体)

図2: 震央付近での計測震度分布(左:6月13日の地震,右:2月21日の地震)。

震央付近の日本の気象庁震度階相当値の空間分布を図2の地図に示している. 今回の震度が最も大きかったのは震源の近傍に位置するGODS観測点で震度7相当(計測震度6.7)であった. GODSは Sumnerという地区の南縁の丘の上に位置している.この付近では崖崩れ等の被害が報道されている. また,PARS観測点では震度6強相当(計測震度6.3)であった. GODS, PARSともに2月22日の地震後に設置された臨時観測点であり,EpiSensorが設置されているそうである. クライストチャーチ市街地中心部の震度は2月21日の地震よりも少し小さい. 2月22日の地震で震度6強であったPRPCやREHSは震度6弱,HVSCは震度6強であった.

2011/06/13 02:20 Mw6.0 2011/02/21 23:51 Mw6.1
6月13日の計測震度の分布(震央付近) 2月22日の計測震度の分布(震央付近)

図3: 最大地動加速度分布(左:6月13日の地震,右:2月21日の地震)。

2011/06/13 02:20 Mw6.0 2011/02/21 23:51 Mw6.1
6月13日の最大地動加速度の分布(震央付近) 2月22日の最大地動加速度の分布(震央付近)

図4: 最大地動速度分布(左:6月13日の地震,右:2月21日の地震)。

GODSでの最大地動速度は169cm/sであった.

2011/06/13 02:20 Mw6.0 2011/02/21 23:51 Mw6.1
6月13日の最大地動速度の分布(震央付近) 2月22日の最大地動速度の分布(震央付近)

図5:速度波形の比較

主要な観測点での速度波形を示す.振動が卓越している方向の成分をそれぞれ示している. 比較のため,2004年新潟県中越地震の川口町役場と1995年兵庫県南部地震のJR鷹取駅の記録もあわせて載せている. 震源近傍のGODSやPARSでは周期1秒程度のパルス波が見られ,指向性パルスである可能性が考えられる.

速度波形の比較

図6:減衰5%の絶対加速度応答スペクトル(左)と擬似速度応答スペクトル(右)の比較

GODSの地震動は,周期1.2秒で速度応答が450cm/sとかなり大きい. 2月22日の地震のPRPCやCCCCの記録を上回っているほか,2004年新潟県中越地震の川口町役場,1995年兵庫県南部地震のJR鷹取駅の記録に匹敵する.

※過去の国内の地震との比較対象をJMA神戸,K-NET小千谷から,鷹取,川口に変更しました

応答スペクトルの比較

謝辞: GeoNet (GNS Science, New Zealand)の強震記録を使用しました.関係者の皆様に感謝いたします.

(京都大学防災研究所 地震災害研究部門 強震動研究分野 浅野 公之・岩田 知孝)