2000年鳥取県西部地震(Mjma7.3)の断層面上の高周波(2〜10Hz)地震波の生成過程の推定
last modified 31 Oct. 2000
●経験的グリーン関数を用いたエンベロープインバージョン(Kakehi and Irikura, 1996)によって断層面上の高周波(2Hz〜10Hz)地震波の生成過程の推定を行った。
〇データ
k-netの15観測点(Fig.1)で得られた加速度記録に2〜10Hzのバンドパスフィルターを施す。ウィンドウ幅5秒のRMSを求め、それをエンベロープとする。元々の波形データのサンプリング間隔は0.01秒であるが、エンベロープデータはデータ量軽減のため0.5秒間隔でリサンプルした。
〇経験的グリーン関数
10月6日14時52分に発生した余震記録(Mjma4.4)
〇断層モデル
- strike150°, dip85°(Freesia)
- 長さ21.6km、幅15km(京都大学防災研究所地震予知研究センターにより求められた本震発生後約半日の余震分布(Fig.2,Fig.3)より)
- 小断層の数 6×5(本震と余震の高周波数側と低周波数側のスペクトル比より
- 応力降下量の比 8.0(本震と余震の高周波数側と低周波数側のスペクトル比より)
- 小断層サイズ 3.6km×3km
- インバージョンで求められるモデルパラメータは各小断層の加速度放射強度分布(各小断層の重み)とし、各小断層の破壊開始時刻はモデルパラメータに含めず、破壊開始点から一定速度(2.3km/s)で円形に広がる破壊伝播速度に対応するものとした。破壊開始点は35.2679N, 133.3527E, 13.5km(京都大学防災研究所地震予知研究センターを参照)を使用した。
〇エンベロープインバージョン
エンベロープインバージョンをする際の初期モデルは小断層の重みが一様。イタレーションによって観測エンベロープと合成エンベロープの残差の2乗和が最小となるモデルを最終モデルとする。
〇結果・まとめ
今回推定された高周波地震波の放射強度分布と関口・岩田によって求められたすべりの分布をFig.4に示す。断層面を南西側から見ている。高周波発生強度の高い領域は関口・岩田によって波形インバージョンで求められたすべりの大きい領域の周囲にある。特に興味深いのは、アスペリティーの上側の浅いところに強度が分布している。このことから地表近くで大きなすべりを起こしたが、そのあと地表近くではブランチングによって高周波地震波を放出して破壊は停止した。ブランチングが起こったことによって地表まで切れず、地表断層が(ほとんど)現れなかった、というシナリオが考えられる。
エンベロープのフィットをFig.5に示す。黒線が観測エンベロープ、赤線が初期モデルに対する合成エンベロープ、青線が最終モデルに対する合成エンベロープである。多くの観測点においてはエンベロープのフィッティングは改善されているが、いくつかの観測点においてはあまり改善はみられない。今後は震源モデルパラメータのチェックや余震の破壊伝播特性について詳細にチェックする必要はある。
謝辞:科学技術庁防災科学技術研究所K-netのデータを使用させていただきました。また、震源データに関しては京都大学防災研究所地震予知研究センターのSATARNのデータを使用させていただきました。記して感謝します。
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