2008年6月14日16時30分更新
(1)2008年岩手宮城内陸地震強震動波形と応答スペクトル
図1-1は今回の岩手宮城内陸地震の加速度記録(IWTH25(UD), AKTH04(EW), MYG005(NS))を2004年新潟中越地震の小千谷NIG019(EW)、1995年兵庫県南部地震の神戸海洋気象台(Kobe-JMA:断層直交方向)の加速度波形と比較した。
IWTH25、AKTH04でおおきな最大加速度の記録が得らえているが、短周期成分が相対的に卓越していることがわかる。
図1-2の速度で見るとAKTH04は短周期に富んでおり、MYG005はやや長周期に卓越している地震動と見える。
図2-1,図2-2にはそれぞれ加速度応答スペクトル、擬似速度応答スペクトルを示す。
今回の地震の3波は、小千谷や神戸海洋気象台波のような周期1秒程度でのレベルはそれほど大きくないことがわかる。
図1-1:加速度波形の比較
図1-2:速度波形の比較
図2-1:加速度応答スペクトル(5%)の比較
図2-2:擬似速度応答スペクトル(5%)の比較
(2)KiK-net一関西における変位について
2008年岩手宮城内陸地震においてベクトル合成値4022ガルを観測したKiK-net一関西
の記録を用いて断層運動に伴う変位量の推定を行った.
http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/topics/Iwatemiyaginairiku_080614/Iwatemiyaginairiku_080614.htm
KiK-net地表観測点における変位量は防災科研から報告されている(6月18日)
http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/topics/Iwatemiyaginairiku_080614/IWT_displacement/
我々は地中の観測加速度記録からも変位量を推定して地表・地中の比較を行った.
(方法)観測加速度記録に対して,信号が来る前の部分と記録の尾部の平均値から基
線補正と時間領域での積分を2回繰り返して変位時刻歴を求めた.
(結果)地表及び地中の地動変位は類似しており,この地点での変位を表している(かっこ内は地中での値).
上方向に152cm(142cm),水平方向はほぼ北東方向に56cm(66cm)移動したと考えられる.
強震記録から見積もられた地動変位とGPSの1Hzサンプリングによる変位の比較は,
例えばMiyazaki et al.(2004, GRL, doi:10.1029/2004GL021457)によって比較
されており,この地点の変位として信頼できると考えられる,また強震記録に断層の食い違
いが観測された例としては,1999年台湾集集地震におけるTCU068地点が有名(例えば,Shin and Teng (2001, BSSA, 895-913)である.
図1:一関西観測点における地動変位
謝辞: 独立行政法人防災科学技術研究所のK-NET, KiK-net強震記録及び気象庁震度計記録を使用しました.関係者の皆様に感謝いたします.
(京都大学防災研究所 地震災害研究部門 強震動分野 岩田知孝・岩城麻子)