M8クラスの大地震の断層パラメーター
一断層長さ,幅,変位,面積と地震モーメントの関係一
入倉孝次郎・三宅弘恵(京都大学防災研究所)
全文章と図面が掲載されたPDFファイルはこちら → M8.pdf (1MB)
Somerville et al. (1999)は,15の地殻内地震について同一手法でインバージョンされた断層すべり分布から一定基準で断層破壊域やアスペリティの抽出を行い,断層面積と地震モーメントのスケーリング則を求めた.彼等の解析した地震の中で最も地震モーメントが大きいものは1992年Landers地震で,その規模はMo=7.5x10**26dyne-cm, Mw7.2である.Miyakoshi (personal comm.)は,Sekiguchi and Iwata (2002)やIwata et al. (2000)により波形インバージョンの解析がなされた1999年トルコ・コジャエリ地震(Mw7.4),1999年台湾・集集地震(Mw7.6),さらに2000年鳥取県西部地震(Mw6.8)をはじめとする最近の日本の5つの内陸地震について同様の手法で震源パラメータの特性化を行い,さらにSomerville et al. (1999)の関係式がこれらの地震ついても有効なことを確認した.しかしながら彼等の関係式がM8クラスの地震にも適用可能かどうかは検証されていない.
M8クラスの大地震に対する断層震源パラメータのデータはWells and Coppersmith (1994)によりコンパイルされている.彼等の断層震源パラメータは,余震分布や活断層情報,一部は測地学的データから求められたものである.そのうち11の地震についてはSomerville et al. (1999)によって解析されており,同一地震についてWells and Coppersmith (1994)とSomerville et al. (1999)の断層震源パラメータを比較すると,若干のばらつきはあるが良く一致していることがわかる(Fig. A1).
また断層震源パラメータについては,これまで松田 (1975), Shimazaki (1986), 武村 (1998)などにより気象庁マグニチュード或いは地震モーメントに関するスケーリング式が提案されている.このうち松田 (1975)によるいわゆる松田式は気象庁マグニチュードを用いた経験式であるが,Takemura et al. (1990)による内陸地震に関する気象庁マグニチュードと地震モーメントの関係式を介して地震モーメントに関する関係式に変換できる.
そこで本稿では,波形インバージョンの結果からSomerville et al. (1999)およびMiyakoshi (personal comm.)により求められた巨視的断層震源パラメータに,Wells and Coppersmith (1994)によってコンパイルされた断層震源パラメータを加えて,M8クラスの大地震の断層震源パラメータに関するスケーリング則の再検討を試みる.あわせて,ここで検証された断層パラメータの関係式とこれまでの同様の関係式[松田(1975), Shimazaki(1986), 武村(1998)]との関係について議論する.
参考文献
Iwata et al. (2000). EOS Trans. Am.Geophys. Union, 82, 882, 2000.
松田 (1975). 地震2, 28, 269-284.
Sekiguchi and Iwata (2002). Bull. Seism.Soc. Am., 92, 300-311
Shimazaki, K. (1986). Earthquake Source Mechanics, AGU Monograph, 37, 209-216.
Somerville et al. (1999). Seism. Res. Lett., 70, 59-80.
Takemura et al. (1990). Sci. Rep. Tohoku Univ., 32, 77-89, 1990.
武村 (1998). 地震2, 51, 211-228.
Wells and Coppersmith (1994). Bull. Seism. Soc. Am., 84, 974-1002.
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