2015年6月25日の雑誌会
Report of Zassikai on June 25, 2015

日 時:2015年6月25日(木)10:30 -
[DATE: June 25, 2015 (Thu.) 10:30 - ]

場 所:防災研究所セミナー室 E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI conference room, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 下村智也
Title: Mrinal K. Sen, Reetam Biswas, Prantik Mandal, and Prakash Kumar (2014)
Basis Pursuit Receiver Function
Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 104, No. 6, pp. 2673?2682, December 2014, doi: 10.1785/0120140004
Summary: レシーバ関数は、遠地地震の地震波記録のP波部分を対象として、radial成分をvertical成分でデコンボリューションすることで得られる。デコンボリューションを行うことで、両成分に含まれる震源・伝播効果を除去し、PS変換波を強調し、サイト近傍の構造の情報を抽出できる。現在、レシーバ関数は地殻や上部マントルの不連続を描くためによく使われている。
本論文では、時間領域でレシーバ関数を求める新たな手法、basis pursuit deconvolution(BPD)を提案する。従来の手法では、レシーバ関数を求めるために誤差とモデルのL2ノルムを最小化していたのに対し、BPDでは、モデルの拘束条件にL1ノルムを用い、Gradient Projection Sparse Reconstruction(GPSR)手法を用いてL1ノルムを最小化する。
BPDを用いて得られたレシーバ関数basis pursuit receiver function(BPRF)の有用性を示すため、モホ面上に厚さの異なる薄層を置いた地殻モデルに対して合成地震波を作成し、レシーバ関数を求めた。従来の手法と比較して、より薄い層をモホ面上に置いた地殻モデルに対して、二つの層で生じた変換波を分離できる。また、層が傾斜しているモデルに対しても同様の実験を行い、手法の有用性を示した。
これを踏まえてインドのKutchの地溝盆地における、Mw5以上の遠地地震の広帯域波形データに対してBPRFを求め、一次元速度構造モデルを求めた。BPRFによって得られた一次元速度構造モデルは、従来の手法で求めた構造モデルと異なり、モホ面や盆地をはっきりとした不連続ではなく、線形勾配として描いている。
ここで、手法を実際の観測波形データに対して適用したインドのKutchの地溝盆地は、手法の有用性を示すために用いたモホ面上に薄い層を置く構造モデルの実験と構造モデルの特徴が違うため、本論文の手法が実際のデータに適用した時に有効かどうかについては疑問が残った。

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