2014年6月12日の雑誌会
Report of Zassikai on June 12, 2014

日 時:2014年6月12日(木)10:30 -
[DATE: June 12, 2014 (Thu.) 10:30 - ]

場 所:防災研究所大会議室 S-519D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI conference room, S-519D]

雑誌紹介

Reporter: 田中宏樹
Title: Jon B. Fletcher and John Boatwright(2013) Site Response and Basin Waves in the Sacramento-San Joaquin Delta, California Bulletin of the Seismological Society of America, 103, 196-210, doi: 10.1785/0120110347.
Summary: サクラメント・サンホアキン川デルタはセントラルバレーの西端に位置するデルタ地帯である。それらを形成するサクラメント川とサンホアキン川は西方へと流れサンフランシスコ湾に注いでいる。このデルタ地帯は、アメリカ南北戦争(1861)後に農地として開拓が行われ、水を抜くために外周に堤防が建設された。しかし、様々な研究により、局所的な揺れによって堤防が決壊する恐れ、さらにはそれによって、サンフランシスコ湾の塩水がデルタに流れ込み、デルタの水が塩化してカリフォルニア州の住民に大きな影響を出す恐れが指摘されている。
この研究では、堤防の地震危険度に対する地盤の寄与を調べるために地震計を設置して、二つの観測を行った。第一の観測は、堤防と堤防近くの地盤応答を比較するために、その二ヶ所をペアとして観測点を設置し、第二の観測は、デルタ地帯のより広域的かつ様々な地盤応答を調べるために広い範囲に観測点を設置した。ここで、求めたい地盤応答は二つの方法で定義される。それは、硬い地盤を持つブラックダイヤモンドマイン観測点を基準として、それぞれの観測点との比を取る伝統的スペクトル比法(TSR法)と、一つの観測点の微動の水平と鉛直のスペクトル比を取る中村の方法(SH/SV法)である。結果として、堤防地盤では農地地盤に比べて典型的に狭く大きな共振を持つことが分かった。特に1.5~3Hzの周波数帯に強い共振応答を持っている。堤防頂上のある観測点(SRT)でのピークの増幅率はTSR法で15、SH/SV法で9となった。ピークの周波数帯は似ているが、ピークの増幅率はTSR法の方が大きい。
また、観測でS波より20秒ほど遅く到達するレイリー波が観測された。それは、卓越周期0.8秒の波群である。そして、この遅いレイリー波が観測された。それは、卓越周期0.8秒の波群である。そして、この遅いレイリー波はP.Byerlyが発見したバレーウェーブと呼ばれる波に似ているように見える。ホーランドマリナでの三点アレイ観測により、位相速度が約600m/s、伝播方位角は71度と求められた。震源からホーランドマリナの方位角が70度前後であることから、この波群はセントラルバレーで散乱せず、震源からまっすぐ来た波であることが分かる。このバレーウェーブの分散曲線から、パスの速度構造を求めると、深さ0.2kmでS波速度350m/sから深さ2kmでS波速度1.1km/sまで増加する速度構造が得られた。

Return