2012年11月8日の雑誌会
Report of Zassikai on November 8, 2012

日 時:2012年11月29日(木)10:30 -
[DATE: November 29, 2012 (Thu.) 10:30 - ]

場 所:防災研究所セミナー室III E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI seminar room III, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 佐藤佳世子
Title: Kagawa, T., S. Sawada, and Y. Iwasaki,
On the relationship between azimuth dependency of earthquake ground motion and deep basin structure beneath the Osaka plain,
J. Phys. Earth, 40, 73-83, 1992.

Hatayama, K., K. Matsunami, T. Iwata, and K. Irikura,
Basin-Induced Love Waves in the Eastern Part of the Osaka Basin,
J. Phys. Earth, 43, 131-155, 1995.

Summary:  今回の雑誌会では大阪盆地の深い盆地構造による地震動への影響について既往研究から2つ取り上げて紹介した。後続波振幅の方位依存性についての研究を行ったKagawa et al. (1992)、および観測された後続波が盆地生成Love波であることの解析と、2次元シミュレーションによる再現を行ったHatayama et al. (1995)である。
◆Kagawa et al. (1992) について
 大阪盆地での観測記録からS波の後続部によく発達した波が見られること、また、後続波振幅に強い方位依存性があり、震源位置が南の方が北よりも表面波の振幅が大きいことを示した。論文中では、原因として北と南の盆地の縁の構造の違いではないかと推測しているが、同研究内で行った改良Aki and Larner 法での2次元数値シミュレーションでは方位による差異は再現されなかった。筆者らは原因として以下の二つを挙げている。用いた構造モデルでは盆地の縁付近の構造がよく表現できていないという原因が一つ。また、今回の数値シミュレーションでは堆積層を一様速度とし、基盤形状を考慮したモデルを用いたが、この構造で強く励起される周期帯は、観測された表面波の卓越周期(~1秒)よりも長周期である。したがって観測された1秒程度の周期帯の表面波に影響を及ぼすようなより浅い構造が考慮されていないため再現がうまくいかなかったのではないかと述べている。
◆Hatayama et al. (1995) について
 筆者らは、3つの深発地震に対して、盆地内の観測点である大阪管区気象台(OSA)での地震記録に、直達S波後約30秒後にS波より振幅の大きい波群があることを発見した。その波群の成因を調べるため、OSA付近の空間小アレイおよび東西方向の線形アレイの記録を解析(センブランス解析、polarization解析)した。これにより、盆地の東端に入射した直達S波によってLove波が励起されたことがわかった。また東西ライン断面の大阪盆地の地下速度構造モデルに基づいた2次元SH問題を、間接BEMによる数値シミュレーションによって解き、観測されたLove波の卓越周波数および群速度と良い一致の結果を得た。Discussionでは地下構造モデルを変化させた場合のシミュレーション結果について議論しており、最もよい一致を示した構造モデルAはKagawa et al.(1993)のモデルを堆積層のレイヤー数や盆地東端の構造、上町台地下の地下構造に台地に対応する基盤の盛り上がりを加えたものを用いている。しかし、最善モデルAでも盆地生成Love波の大きな振幅は再現されなかった。この問題点に対しては、一般に3次元数値シミュレーションの方が2次元数値シミュレーションによる合成波形よりも振幅が大きくなる傾向が見られることから、2次元数値シミュレーションという手法の為に合成波形の後続波の振幅が小さく見積もられたのではないかと指摘している。
 これらの研究以降、大阪盆地の3次元地下速度構造モデル構築とモデルシミュレーションが行われている。しかし、上記2つの論文で結論されている課題は直接的にはまだ解かれていないようだ。

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