2010年7月22日の雑誌会
Report of Zassikai on July 22, 2010

日 時:2010年07月22日(木)10:30 - 12:30
[DATE: July 22, 2010 (Thu.) 10:30 - 12:30]

場 所:防災研究所セミナー室III E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI seminar room III, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 安田 博信 [Hironobu YASUDA]
Title: Gallovic, F., M. Ka¨ser, J. Burja´nek, and C. Papaioannou (2010)
Three-dimensional modeling of near-fault ground motions with nonplanar rupture models and topography: Case of the 2004 Parkfield earthquake
J. Geophys. Res., 115, B03308,doi:10.1029/2008JB006171
Summary: 2004年Parkfield地震(M6.0)において、余震分布に最もフィットする長さ40km、幅15kmの平面断層(PF)モデルと1次元速度構造モデルを使用し、断層近傍に位置する観測点での1Hz以下の地震動シミュレーションを行った。すると、横ずれ断層のS波放射パターンと対応した、上下(V)成分と断層平行(FP)成分の振幅がほぼ0で、断層直交(FN)方向に卓越した直線状のパーティクルモーションが得られた。しかし、観測記録は、3成分ともピーク速度の大きさが同程度で、水平面内のパーティクルモーションが円形であり、上述のモデルシミュレーションの結果と異なっていた。本研究では、その原因を説明しうる仮定として非平面断層面と3次元地下構造と地表地形を提案し、パーティクルモーションとFN/FP, FN/Vピーク速度比に関して、観測記録を説明するために最も必要不可欠な仮定はどれかを検討した。
断層モデルとして、長さ4km、幅3kmの50枚の小断層で構成される、余震分布に対して最小自乗法を用いて断層の形を決定した非平面断層モデルと、そのモデルの小断層面に、断層面の下部ほどなだらかに、ランダムな凹凸を局所的に与えた非平面断層モデルを作成した。断層モデルの断層面には、Liu et al.(2006)が推定したすべり分布をおいた。また、3次元速度構造モデルは、Thurber et al.(2006)が求めた余震記録の速度トモグラフィーによる3次元P波速度構造モデルと、Brocher(2005)が求めたP波とS波速度、密度の関係式から得られるS波速度と密度から与えた。一方で、地表地形モデルはFarr et al.(2007)が作成した高解像度デジタル標高モデルから与えた。PFモデルと2つの非平面断層モデルを合わせた3つの震源断層モデルと1次元と3次元速度構造モデルを用いたシミュレーションを行った。その際、3次元モデルには地形を導入する場合とそうでない場合の計算を行い、これらの結果を比較した。
速度構造モデルを固定して、平面断層の代わりに非平面断層モデルを用いたときよりも、断層モデルを固定して、3次元速度構造モデルを用いたとき、多くの観測点で記録に近いピーク速度比とパーティクルモーションが得られたことが示された。また、3次元速度構造モデルに地形を考慮した場合と考慮していない場合の結果をピーク速度比で比較したが、両者の違いはほとんどなかった。ゆえに、Parkfield地震を対象とした場合、3次元地下構造は断層近傍での地震動の推定に不可欠な仮定で、断層の非平面性やParkfield地域の地表地形よりも重要であると著者は主張している。なお、3次元速度構造モデルにおける波動計算に必要なQ値についての記述はなかった。

Reporter: 浅野 公之 [Kimiyuki ASANO]
Title: Cadet, H., P.-Y. Bard, and A. Rodriguez-Marek (2010)
Defining a Standard Rock Site: Proposition Based on the KiK-net Database
Bull. Seism. Soc. Am., 100, 172-195.
Summary: 地盤の観測点のサイト特性を得る手法の1つとして,岩盤と見なせる観測点を基準観測点として他の観測点の相対的なサイト特性を求める基準観測点法が広く使われている.しかし,基準観測点法には基準観測点の選び方によって得られる増幅率が課題になったり過小になったりという問題点がある.そこで,本論文では基準観測点を均質なものにするため,基準観測点の客観的かつグローバルな選定規準を提案した.地盤種別の分類規準として広く使われている,Vs30(表層30mの平均S波速度)とf0(卓越周波数)を用い,それらを単独で使用した場合3種類,組み合わせて使用した場合2種類の計5種類の規準を定義した.KiK-net全点のボアホール検層データと地震記録を用い,以上5種類の選定基準それぞれについて,S波速度構造の均質性や地表/地中及びH/Vスペクトル比のばらつきを調べた.その結果,Vs30が750m/s以上850m/sかつf0が8Hz以上という規準を用いた場合に,S波速度構造のばらつき,スペクトル比の低周波数側の増幅率ともに最小限に抑えることができることが分かり,著者らはこの規準を岩盤観測点の認定基準として使うことを提案した.ただし,この場合でも高周波数側になるにつれて系統的に地表/地中の増幅率が増大するという問題点はある.ただし,地表/地中はその間の節が現れるので,outcropの地震動としてみた場合は異なる可能性はある.

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