2009年11月26日の雑誌会
Report of Zassikai on November 26, 2009

日 時:2009年11月26日(木)10:30 - 12:30
[DATE: November 26, 2009 (Thu.) 10:30 - 12:30]

場 所:防災研究所セミナー室III E-517D室 (本館E棟5階)
[PLACE: DPRI seminar room III, E-517D]

雑誌紹介

Reporter: 瀧口 正治 [Masaharu TAKIGUCHI]
Title: Rebecca M. Harrington and Emily E. Brodsky (2009)
Source Duration Scales with Magnitude Differently for Earthquakes on the San Andreas Fault and on Secondary Faults in Parkfield, California
Bull. Seism. Soc. Am., 99, 99, 2323-2334, DOI:10.1785/0120080216.
Summary:  この論文では,Parkfield地域のSan Andreas断層で発生した複数の小地震でSource Time Function(以下STF)のパルス幅を計測し,それらの比較を行った.その結果,Parkfield地域で発生したM1.4-M3.7の地震のSTFのパルス幅(震源継続時間)はほぼ同じ長さであることがわかった.上記の範囲の地震ではマグニチュードの大きさに関わらず断層の領域は一定であり,その応力降下量はすべり量のみによって決まる.
 San Andreas断層の活断層面(active fault strand)から離れた部分をSecondary faults(副次断層)と呼び,そこで発生した地震についても同様にSTFのパルス幅を計測したところ,副次断層で発生した地震ではマグニチュードが大きくなるにつれてパルス幅が長くなるという結果が得られた.こちらは一般的に観測される地震の特徴に従っており,副次断層で発生する地震では応力降下量が一定であると推測される.
 これらの違いはSan Andreas断層は数百kmもの累積変位が蓄積され成熟した(matured)な状態であるのに対して,副次断層は変位の累積していない未成熟な状態であることによって,両者が本質的に異なるということを示している.

Reporter: 浅野 公之 [Kimiyuki ASANO]
Title: Tomic, J., R.E. Abercrombie, and A.F. do Nascimento (2009)
Source parameters and rupture velocity of small M < 2.1 reservoir induced earthquakes
Geophys. J. Int., 179, 1013-1023.
Summary: 今回紹介した論文はブラジルのAcu貯水池の水位変化に伴う6つの誘発地震(1.9 EGFを用いたデコンボリューション法によりこれらの誘発地震の震源時間関数を求めた.震源継続時間の方位分布から破壊伝播速度を求め,震源スペクトルのコーナー周波数から震源断層の大きさと応力降下量を推定した.
6つ地震のうち4つは、今回使用している200Hzサンプリングの記録では,パルス幅の方位変化を明らかにするための十分な分解能がなかったとされている.1つの地震は円形クラックモデルで説明できる.残りの1つの地震では,パルス幅の方位角依存性が明瞭であり,S波速度の60%以上の破壊伝播速度でユニラテラルに破壊が進行したと示されている(これは自然地震と変わらない特徴である).推定された応力降下量は26-179MPaの範囲をとり,どちらかと言えば大きめの応力降下量であり,自然地震と比べ遜色はない.
他の地域での先行研究では,水位変化や水圧破砕に伴う誘発地震の応力降下量は自然地震のそれよりも小さいという結果が出されているが,本研究の結果はそれらとは明らかに異なっている.これらについて,今回対象とした地震の深さ(1-5km)と,先行研究が対象としている地震の深さ(5-13km)が違うことや,水圧破壊は事前に存在しない断層の複雑な破壊であることなどを指摘している.
本研究の結果から,著者らは,貯水池周辺で起きる浅い誘発地震(地表までの距離が近い)の応力降下量は自然地震と同程度であるため,貯水池周辺の地震ハザード評価にとってもこのような誘発地震を考えることは重要であるということ主張している.

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