2002年度修士論文

2000年鳥取県西部地震において大分堆積盆地で観測された 長周期(5〜10s)地震波のシミュレーション

奈川 泰久


堆積盆地における長周期(周期数秒)地震動についての研究は,1985年メキシコ地震以来盛んに行われており,堆積盆地境界によって生成する2次的表面波によって,増幅や地震動継続時間の伸長が起きることが報告されている.

2000年鳥取県西部地震では,全国に数十km間隔で分布するK-NET,KiK-netによって記録がとれている.これらの記録を用いてRadial,Transverse,Vertical の3成分について周期5〜10sの最大速度の面的な分布を調べると,横ずれの震源メカニズムによるSH/Love 波の方位特性が見られ,大分,大阪,濃尾などの堆積盆地において最大速度が周辺観測点の3〜10倍に増幅していることがわかった.

本研究では,大分堆積盆地において,2000年鳥取県西部地震の記録を分析することにより,地震動特性と堆積盆地構造との関係を調べた.

まず,大分堆積盆地内観測点OIT010(K-NET)の記録には,周辺観測点にはみられない大振幅の後続波群が存在することがわかった.OIT010から0.5〜1kmの距離にある建築研究所強震計,気象庁震度計の,3観測点の記録を用いてセンブランス解析を行なったところ,この後続波群は震央からではなく北〜北北西から伝播していることがわかった.この後続波群の粒子軌跡は伝播方向と水平面内で直交しており,また,周期5〜10sの位相速度に正分散性が見られることから,盆地構造で2次的に励起されたLove 波と考えられる.

次に,この後続波群を説明するために,3次元有限差分法(Pitarka,1999)による地震波シミュレーションを試みた.計算領域は,震源から大分堆積盆地が全て含まれるように300km(EW)×300km(NS)×50km(depth)とした.震源は岩田・関口(2002)によってインバージョンで求められたすべり分布の主破壊領域と対応するような位置に点震源を置いた.盆地外の地殻構造には水平成層のモデルを仮定した.盆地構造モデルは,楠本・他(1997)が推定した盆地の基盤深度分布と,重力異常図を参考にして作成し,盆地内では,層境界が基盤形状と相似な4層構造とした.ここで仮定した盆地の大きさは長径100km×短径30km くらいで,盆地最深部の深さは4km 程度である.

シミュレーションされた波形は,鳥取県西部地震の震源付近から大分堆積盆地に至るまでの観測波形と良く一致した.堆積盆地内については,直達S波と異なる方向から伝播する大振幅の後続波が存在し,その波が正分散性をもっていることと,進行方向に直交成分の波動であることがわかり,観測波形の性質を定性的に説明することができた.