2009年度修士論文

KiK-net一関西観測点における強震時および弱震時の表層地盤の震動特性

木村 美帆


地震による地面の揺れは震源・伝播経路・サイト特性によって決まる.サイト特性のなかでも表層地盤の震動特性は地表地震動に大きな影響を及ぼすことがある.地震動に対する表層地盤の震動特性は入力する地震動の強さによって異なり,強震時に水平動に対して表層地盤が非線形応答を示すことは多くの研究によって認められている.一方,上下動に対する震動特性に関しては十分な議論がなされていない.本研究の目的は水平動と上下動に対する強震時と弱震時または強震前後における弱震時の表層地盤の震動特性の違いを調べることである.また,このような違いをもたらす地盤物性値の変化についても調べた.対象サイトであるKiK-net一関西観測点(IWTH25)には地表と地中(深度260 m)に地震計が設置されている.この観測点は2008年岩手・宮城内陸地震の際に強い揺れに見舞われ,大きな加速度(最大加速度はNS:1143 gal,EW:1433 gal,UD:3866 gal)を記録した.

まず,IWTH25で得られた地震動データを用いて地表と地中のフーリエスペクトル振幅比の解析を行った.強震時と弱震時の比較として本震と余震の観測スペクトル比を比べると水平成分のそれらは大きく異なっていた.鉛直成分に関しては0.2-10 Hzでは互いによく似ているが10-20 Hzの高周波数域において違いが見られた.強震前後の弱震時の観測スペクトル比を比較すると,水平成分,鉛直成分ともに主な特徴はよく似ている.しかし,5 Hzより高周波数側では差が認められ,強震によって表層地盤の応答に何らかの変化が生じた可能性が示唆される.

次に,Thomson-Haskell法による伝達関数を用いて表層地盤の速度構造とQ値の推定を行った.強震前の弱震時,強震時,強震後の弱震時のそれぞれに対してモデル化を行った.これらのモデルから計算される伝達関数はそれぞれの観測スペクトル比の主な特徴を再現した.強震時には4層目まで(0-64 m)のS波速度と2層目まで(0-6 m)のP波速度が見かけ上減少した.強震時にこれらの層は非線形応答を示したと推測されるが,ひずみが小さくなると直ちに速度は回復したことがわかった.ただし,1層目の速度は本震後の弱震時にも回復が見られず,強震動によって1層目の地盤の状態が大きく変化したことが示唆される.強震前および強震後の弱震時の速度構造は1-6層目(深度0-176 m)においてボーリング調査結果よりも小さく推定され,1層目(深度0-1 m)に関しては特に小さい速度が得られた.強震前後の速度構造を比較するといくつかの層で違いがあったが,強震前後の観測スペクトル比に見られた差には1層目の速度変化が大きく影響していると考えられる.また,強震時のQP値とQS値は弱震時より周波数依存性が弱くなり,高周波数帯で値が小さくなった.