地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集, 385, 1998

経験的グリーン関数法を用いた
1997年鹿児島県北西部地震の震源過程

三宅弘恵・岩田知孝・入倉孝次郎(京都大学防災研究所)

Source processes of the 1997 Kagoshima-ken Hokuseibu earthquakes

using empirical Green's function method

Hiroe MIYAKE,Tomotaka IWATA, and Kojiro IRIKURA (DPRI, Kyoto Univ.)


<1>はじめに 1997年3月26日と5月13日に鹿児島県北西部で発生した地震が、本震を囲む震央距離約15kmのK-netで記録された。今回はそれら4地点の本震・余震の記録を使用して経験的グリーン関数法のパラメータの新しい決定方法を提案するとともに、両地震の震源過程を考察する。

<2>解析方法 経験的グリーン関数法で使用するパラメータN,C[Irikura(1986)]を求めるために、まず各観測点ごとに本震とその近傍で発生した余震の震源スペクトル比をとりdirectivityの影響を小さくするため平均する。次にオメガ二乗則の比の式に対して尤度が最小となるfittingを行うと、モーメント比, 本震と余震のそれぞれのコーナー周波数にあたる3つのパラメータが求まる。最後にこれら3つのパラメータからN,Cを決定した。以上を基に0.2Hzから20Hzの範囲で変位・速度・加速度波形を使い3月・5月の地震の解析を行った。3月の地震に関しては断層面と本震位置は固定し、震源断層の中で強震動を生成した領域(アスペリティ)のサイズと配置を変数としてforward modelingで最適解を求めた。5月の地震に関しては一部の観測点で2発のパルスが確認されていることやL字形の余震分布から南北・東西の断層の存在が指摘されているが、どのような震源過程が考えられるかを確認した上で3月と同様の解析を行った。

<3>解析結果 <2>で述べた方法により、従来サイト特性のためパラメータを求めることが困難であった観測点においても経験的グリーン関数を用いることが容易になった。また変位・速度波形の合成結果から考えると、求められたN,Cは今回のような観測点配置においては適したパラメータであったと思われる。3月の地震は東西約7km、深さ6kmの領域で破壊が東下方から始まったという結果を得た。また5月の地震については、まず南北約3km、深さ4kmの領域で北下方から破壊が起こり、約2秒後に今度は破壊開始点から東上方に向かって東西約3km、深さ4kmの領域へも破壊が進んだ可能性が高いことがわかった。この結果は[堀川・他(1997秋季学会予稿)]のスリップの大きい領域に相当すると考えられる。

<謝辞> 本研究はK-netデータを使用しました。記して感謝いたします。


 

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