課題研究
Last updated 2011/02/06
この研究室では,地震が起きた時の揺れ(「地震動」,特に被害を起こすよう
な強い揺れを「強震動」と呼びます)に関する研究を行っています.地震の揺れの研究には,その基本となる地震波の生成(震源)や伝播(弾性波動)についての知識に加えて,活断層や構造地質に関する知見から,地震動被害を考える場合の建物などの揺れに対する応答に関することも含めた幅広い観点にたった考え方を持っておく必要があります.そのようなことはすぐに身に付くものではないと思いますが,常にそのような興味を持っていることが必要です。
地震の揺れに関する研究項目については
このようなもの
が上げられます.これらの項目の中から,研究内容を決めていくことになります.
卒業研究のスケジュール(例)を以下に示します.
- 前期
- 弾性波動論や地震学の基本的な教科書の輪読
- コンピュータでの実習
- (大学院入試試験の準備)
京都大学理学研究科地球惑星科学科では通例8月初旬に大学院入試があるため,前期はその受験勉強が中心となりますが,卒業研究をすすめる上で基本的なこととなる,地震学などに関する教科書(英語です)の輪読や,地震学で使われているソフトウエアに慣れるためコンピュータ実習を行います.また,卒業研究をすすめるにあたって,地震情報の収集を行います(地震被害などに関するリンクのひとつは
これ
)
.
さらに,教員や先輩との話のなかで,興味のある研究テーマを考え,卒業研究の内容を絞っていきます.研究テーマが決まると,まずその研究に関係した論文リストを作成しそれを収集します.
輪読ゼミの内容は
リンク
の通りです。4回生及び大学院生の数人規模で行っています。現在は浅野先生が担当し、びしびししごいてくれます。
- 後期
- 弾性波動論や地震学の基本的な教科書の輪読(継続)
- 解析
- 卒業研究発表・卒業論文作成
前期試験・大学院試験がおわり,必要卒業単位取得のめどがたっていることと思いますが,前期から継続しての輪読に加えて,卒業研究に向けての解析を行います.ここからは卒研に向けての本格的な研究がはじまります.最近の卒業研究のテーマはここを参照してください.
地球物理の固体系の課題研究(T3)は,合同の課題研究発表会を例年2月初旬に行っています.そこで,研究発表を行うことになります.
Q&A
以下に,4回生で当研究室に来られた場合の情報をQ&A方式でまとめてみま
した.参考にしてください.この他の内容について知りたいことがあれば,岩
田知孝(iwata@egmdpri01.dpri.kyoto-u.ac.jp atマークを全角にしていま
すので,お手数ですが,コピペしてください.)までメールをください.
Q:研究室のfacilityは何ですか?
A:今の研究室の状況(構成人員はトップページの
「構成員」
を見てください)では,机・椅子・本棚とパソコン(最新鋭とはいきませんが),そ
して研究室の(そこそこ速い)ワークステーションのアカウントを手にいれる
ことができます.その環境を生かしてください.「最近の話題」にもあります
ように,来訪者によるゼミも不定期にあります.
Q:どのくらいの頻度で研究室にくればいいの?
A:どれだけ来ていただいても結構です(笑).
4年生の実勢としては,前期は「輪読の日」として週1回+α,後期は卒研
がありますのでそれ以上,卒業研究発表前は泊まり込み?ということが繰り
返されているようにも見受けますが、泥縄式はやめ、研究は計画的に!(爆).
当然データ解析や文献調べなどは研究室で効率的におこなうことができますので、研究室にいることを有効活用してください。自宅と同じように考える必要はありません
Q:卒論の研究発表ってどれくらいたいへんなの?
A:通例全体で20分から30分の発表と質疑応答をします。パソコンによるプレゼンをします。
固体系課題研究全体で集まってやるので,さまざまなテーマの発表があり,参加している教員、大学院生の方もバラエティに富んでいるので質問も多岐に渡ります. 起承転結をはっきりさせることが大事です.
Q:卒論ってどれくらいたいへんなの?
A:これもボリュームで決まるものではありません。むしろ解析をすすめて,興味深い成果がでれば,学会、研究会,シンポジウムでの発表を勧められることでしょう.この研究室の教員・学生が国内外の各学会でどのような発表を行っているかは,
ここ
をご覧ください.
卒業論文にとどまらず,投稿論文(雑誌にのる)にもまとめることを勧められることもあります. 特に大学院後期課程まで進学を考えている人は(研究のしはじめでは何のことかわからないかもしれませんが)論文としてまとめることを視野にいれた研究をすすめるとよいと思います.
Q:参考書はありますか?
A:輪読セミナーで使っている英語の本は,地震学の基礎的な事柄から,発展的な内容を網羅しています.ゼミでは1年で全部をすることは無理なんですけど,必要な章を読むことも重要です.
日本語の教科書としては,以下のものをあげておきます.Webでキイワード検索していただいたら,見つかると思います.当研究室にもありますし,各図書室でも見つかるかと思います.
・地震動 その合成と波形処理 理論地震動研究会編
・地震学 第3版 宇津徳治
・地震発生の物理学 大中・松浦
・地震の辞典
・新地震動のスペクトル解析入門 大崎順彦
・また,ウェブ教科書として,
強震動の基礎
をあげておきます.多くの内容を見開き方式にまとめたものです.
Q:宇治での生活は?
A:2003年に生協宇治会館が改装され,京大キャンパスで一番ゆったりとしたカフェテリアがあり、夜は20時までやっています.キャンパス外の徒歩距離にも,小さいですが,各種和食・中華・喫茶・焼き肉・有名パン屋があります。黄檗プラザにはコンビニ(日曜休みですが),徒歩圏にコンビニ・スーパーマーケット・酒量販店もあります.
ここまでつきあってくださってありがとうございます。(いまは耐震改修工事中なので少々五月蝿いですが)なにはともあれ,閑静なので研究に集中できます.研究室では引き立てのコーヒーを入れて飲むこともできますので、皆さんのお越しをお待ちしております。
おわりに:
(2002/11記)
我々の研究室ではこの課題研究を,当該分野の研究を大学院ですすめていく場
合に基礎的な知識や分析方法を学習するところと位置づけています.我々の
研究室ではもちろん皆さんの志望動機に関係した内容に合致するもののなかか
ら興味深い内容を選んで解析をしてもらうことを第1として考えておりますが,
大学院の進路についてのアドバイスやそれに適合するための研究課題の選択や
学部を卒業したら就職する場合のプログラムも考えています.我々の研究室で
行っている研究内容に興味をもっておられる方の登録をお待ちしています.
(2004/11追記)
2003年5月宮城県沖地震,7月宮城県北部地震,9月十勝沖地震,そして2004
年10月中越地震と被害地震が立て続けに起きています.また2004年9月には紀
伊半島南東沖地震が起き,このあたりでもかなりの揺れを感じました.またこ
の時には大阪盆地などで想定東南海・南海地震時に観測されると予想される長
周期地震動を観測しています.これら実際に得られた地面の揺れから,地下の
中で起きていることを推定し,その知見をもとに地震が起きた時にどういう揺
れが我々を襲うのかを高精度に予測し,少々の地震があっても何ら生活に支障
を来さない災害に強い社会の構築をより一層すすめていく必要を痛切に感じて
います.
(2005/12追記)
この1年の間にも3月に福岡県西方沖地震、8月には宮城県沖地震がおきて被害が出ました。
福岡の地震は日曜昼間だったのでオフィス街に人が少なく、幸いなことに人的被害が小かったと考えられます。2005年3月に文部科学省地震調査研究推進本部からこれまで5年間の調査研究をまとめて、日本ではじめて国の機関による地震動予測地図を作成公表しました。このような地図を一般に広め、地震災害に関する正しい知識を普及させるとともに、これらの地図の意味や精度を向上するための基礎研究を継続しておこなっていく必要性を感じています。
(2008/12追記)
今年は国内では岩手・宮城内陸地震がおき、中国では四川大地震によって10万人もの死者と行方不明者が出ました。地震の揺れに対する研究をさらにすすめて地震災害の軽減に役立てていきたいと考えます。
(2011/02追記)
国内では被害地震が起きていませんが、2010年はハイチの地震や中国で地震が起き、地震災害が多発しております。地震の揺れに関する研究を進める必要性は増していると考えています。
文責:岩田知孝